オフサイトセンター 「箱モノ」拠点無力 原発近接あだ 情報不足に 移転、見直し 機動的態勢づくりを

 原発事故に備え、国が約百二十五億円かけて整備してきた現地対策拠点のオフサイトセンター(OFC)。福島第一原発事故の教訓を踏まえた防災対策の重点区域拡大により、全てが原発から三十キロ圏内の「緊急防護措置区域(UPZ)」に入ることとなり、多くは移転を含めた大幅見直しを迫られる。税金の無駄遣いを繰り返さず、有効に機能するOFCのあるべき場所と姿とは何だろうか。(榊原智康、住彩子)

愛媛県伊方町庁舎内にある伊方原発のオフサイトセンター=伊方町で

■撤退

 東日本大震災が発生した翌三月十二日、放射線医学総合研究所の鈴木敏和外部被ばく評価室長は、ヘリなどを乗り継ぎ現地対策本部が設けられた福島県大熊町のOFCにたどり着いた。
 だが、原発まではわずか五キロ。対策の最前線だったにもかかわらず、「あまりに原発事故の様子を伝える情報が少なかったことに驚いた」と振り返る。
 政府や地元自治体、東京電力などから約七十人が集まったが、通信手段は衛星電話二台のみ。その日に起きた1号機の水素爆発ですら、テレビで知るありさまだったという。通信状況は改善しない上、周辺の物流が滞り、食料が不足。十四日夜には敷地内の放射線量が最大で毎時一・八ミリシーベルトまで高まり、まさに近さがあだとなって十五日には福島県庁に“撤退”を余儀なくされた。

伊方原発から伊方町庁舎までの距離は4.5キロと近い=伊方町で

■甘さ

 OFCは国が費用を負担し、自治体が建設した。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の端末などが備えられ、検出した放射線量や住民の避難状況などの情報を共有。住民や報道関係者への情報提供の場としての役割も持つ。
 保安院によると、原発を対象とするOFCは、全国の原発十七カ所に対し十六施設(福島第一と第二は共用)あり、原発からの距離は二・一~一三・六キロ。三分の二が半径十キロ圏内にある。
 米国スリーマイル島(TMI)原発事故を想定したためだが、全ての誤りはこの点からだった。
 現実に起きた福島第一の事故は、炉の数は四倍、放出された放射性物質は桁違い。簡単に事態が収まるとの見立ては、根底から覆された。
 日本原子力研究開発機構の本間俊充・安全研究センター長は「フランスなど欧州でのOFCは、日本の県庁に相当する自治体の役所の一室が指定されていることが多い」と説明。原発近くに立派な「箱モノ」施設を全国一律に造っているケースは、国際的に珍しいという。

■立地

 東日本大震災では、東北電力女川原発のOFC(宮城県女川町)も被災。ここは原発から約七キロ離れていたが、海岸近くにあり、津波で全壊した。
 国の原子力防災指針を見直している原子力安全委員会の作業部会は、福島第一や女川のOFCがまったく機能しなかったことを踏まえ、立地の見直しに向けた議論を始める。
 作業部会主査でもある本間氏は「OFCの目的は国と地方自治体などの職員がたくさん集まって情報を共有することではない。少数の人が専門家とともに意思決定する態勢が重要。大きな施設は必要ない」と説く。
 原発の防災対策の重点区域の変更でOFCは全てがUPZの中に入る。UPZは避難の準備が求められる区域で、作業部会内には、OFCはUPZの外側に移すべきだとの意見もある。
 ただ再び「箱モノ」の発想では、過ちを繰り返すことにもなりかねない。今度こそ、福島第一の教訓に学び、機動的できちんと機能するOFCの議論が求められる。

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