原発立地自治体の備え 6割超「まだ」 対策・逃げ場 整わず7原発62市町村 本紙ヒアリング調査

 原発の新しい規制基準施行をにらみ電力各社が続々と再稼働申請に踏み切る情勢を受け、本紙は、八日に申請のあった五原発のほか、早期の申請が確実な二原発を加えた七原発の周辺六十二市町村が、どのくらい原発事故への備えをしているのかヒアリング調査した。その結果、六割超の市町村が、いまだ避難計画や具体的な避難先を固めていないことが分かった。

新基準では避難計画を審査せず

 調査対象は、八日に申請が出された北海道電力泊(北海道)、関西電力大飯、高浜(いずれも福井県)、四国電力伊方(愛媛県)、九州電力川内(鹿児島県)に加え、十二日に申請予定の九州電力玄海(佐賀県)と申請方針が表明された東京電力柏崎刈羽(新潟県)を合わせた七原発の周辺市町村。
 東電福島第一原発では、事故への備えをしていたのが原発のごく近くにとどまり、事故の状況や放射性物質の拡散などの情報も現地に届かず、各地で大交通渋滞が起き、住民の避難は困難を極めた。
 原子力規制委員会は新基準で、重点的に防災対策を進める地域を、八~十キロ圏から三十キロ圏にまで拡大。各自治体は規制委の指針を踏まえ、住民をどこに、どのように避難させるかなど具体策を練ってきたが、八日に施行された原発の新規制基準は、地域の防災体制が整っているかどうかを審査する仕組みになっていない。
 避難計画は63%にのぼる三十九市町村がまだ策定しておらず、住民がどこのどの施設に避難するかという点も65%の四十市町村が固め切れていなかった。福島事故で避難が広域に及ぶことは分かっているのに、避難訓練すら実施していない自治体も九市町あった。
 これらの対策は、必要最低限のものにすぎず、原発がある限りは道府県の垣根を越えた訓練などを通じ、常に改良する必要がある。
 形が整いつつあるといえるのは、泊、玄海両原発の周辺市町村くらい。大飯、高浜、川内の三原発周辺では、それぞれ福井県、鹿児島県が避難を県内で完結させることに固執しすぎ、避難計画の策定などの対応の遅れにつながっていた。
 柏崎刈羽、伊方の両原発周辺では、新潟、愛媛両県を中心に準備は進んでいたが、いずれも成案にはなっていなかった。

本紙の調査内容

  重点的に防災対策を進めることになっている原発の約30キロ圏にある62の市町村に7月上旬、電話で取材した。調整役の道府県への補足取材も加え、避難計画ができているだけではなく、大渋滞を起こさないよう避難ルートの調整がされているか、県境などにこだわらず必要な検討がされたか、などの点を重視して3段階で評価した。

地震・津波想定 事故前と同じ

 電力四社の原発再稼働の申請内容を見ると、地震や津波の想定が、原発の新しい規制基準ができる前と同じケースがほとんどだった。
 申請が出た十基のうち、想定する最大級の津波を従来より高く見直したのは四国電力の伊方原発(愛媛県)のみ。北海道電力泊原発(北海道)は「精緻な海底のデータを入手し解析した結果」(北海道電の担当者)として、二・五メートルも高さを下げた。想定する地震の強さも、十基とも従来と同じ。四社とも問題ないとしている。
 特に大飯原発3、4号機については、関電は九月までの運転継続をめぐる議論の際、規制委の指摘を受け入れ、周辺の三つの活断層の連動を考慮したのに、今回の申請では二つの連動に戻した。担当者は「三連動しないという、われわれの調査結果をまず審議してほしい」と話した。
 津波の高さでも、規制委は海底の地滑りによる従来より高い値を想定すべきだと指摘したが、関電は従来のままにとどめ申請した。
 再稼働申請に対する審査は、運転継続の際より厳しくなると予想される。電力各社の地震や津波の想定は新基準前とほぼ変わらず、その姿勢を含め、規制委がどう判断するのかが注目される。

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