新基準施行 どの原発も満たすものなし 4社10基再稼働申請

 原発の新しい規制基準が施行された八日午前、電力四社は五原発十基の再稼働を原子力規制委員会に申請した。現時点では、どの原発も新基準で求められる施設や調査に不十分な点があるが、電力各社は原発停止の長期化による経営悪化を理由に早期の再稼働を目指している。新基準の施行日に、先を争うように申請した。

事故対策拠点、ベントフィルター、地震・津波の見直し…どれも未完了

 申請したのは北海道電力の泊1~3(北海道)を皮切りに、関西電力の大飯3、4(福井県)、高浜3、4(同)、四国電力の伊方3(愛媛県)、九州電力の川内(せんだい)1、2(鹿児島県)の各号機。
 いずれも、重大事故を起こした東京電力福島第一原発の沸騰水型原発(BWR)と異なり、加圧水型(PWR)というのが特徴。
 九電は十二日に玄海原発3、4号機(佐賀県)を申請する予定。東電も柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の申請を目指しているが、新潟県などから「事前了解が必要だ」と反対され、初日の申請を断念した。
 電力各社は、新基準への対応は済んだと強調している。だが、新基準で求められる設備の設置や、地震・津波の新たな想定はまだ完了していない。
 東京電力福島第一原発事故で、作業員の最前線基地となった事故時の作業拠点は、この日申請された中で完成済みなのは伊方原発のみ。他は「代用の施設を検討中」(北海道電)とするなど、対策未了のまま申請した。
 規制委が、唯一稼働中の大飯原発3、4号機をめぐり、作業拠点などは当面、代用施設でもしのげることが確認できれば、現時点で新基準に不適合であっても、九月までの運転継続を認めたことが影響を及ぼしている。
 規制委は三チーム計約八十人で申請内容を審査する。
 審査には最低でも半年はかかるとしており、九月に大飯原発が定期検査入りすると、再び原発の稼働数はゼロとなる。

反対市民「福島忘れたのか」

 東京・六本木の原子力規制委員会では、路上で反対派が「福島を忘れたのか」と批判の声を上げる中、電力会社の担当者が次々と原発の再稼働を申請した。報道陣に「新基準は満たしている」「効率的に審査してもらいたい」などと述べた。

原子力規制庁の職員(右)に原発再稼働申請に抗議する要望書を渡す人たち=8日、東京都港区で

 電力各社「効率的に審査を」


 規制委では、二百人を超える報道陣が見つめる中、午前九時半から電力四社が次々と申請書を手渡した。
 最初に申請した北海道電力の酒井修副社長は「(申請した泊1~3号機のうち)3号機を優先して審査してほしい」と規制委事務局の市村知也安全規制管理官に求めた。提出書類はファイル十七冊分に上った。
 酒井副社長はその後、報道陣に「電力需給が厳しくなる冬場までに一基でも再稼働させたいという強い思いがある」と述べた。
 続いて申請書を提出した関西電力の森中郁雄常務は「厳格な審査をお願いしたい」と話す一方で、「(申請した)四基ともなるべく早く結論を出してもらいたい」と述べた。
 規制委が入るビル前には、都内や再稼働申請された原発の地元から反対派約八十人が集まった。「防潮堤ができていない」「巨大活断層直近」などと各原発が抱える問題を書いたプラカードを掲げ、規制委にも「事業者任せの調査をやめろ」と批判の矛先を向けた。外に出てきた事務局職員に「新基準は再稼働を正当化するため」などとする声明文を手渡した。
 福島市から参加した佐々木慶子さん(71)は「福島の事故は終わっていない。第二の福島が起きたら、日本はおしまい」と話した。
 鹿児島市から参加した向原祥隆さん(56)は「再稼働ありきの新基準。茶番だ」と憤りの表情。審査期間が半年程度と聞いて「本当に安全を確保するつもりがあるなら、もっと時間をかけて審査するべきだ」と話した。


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