原発新基準施行 再稼働急ぐ電力会社 40年廃炉に「例外」抜け道 

 原発の新しい規制基準が八日に施行。原子力規制委員会は「世界最高水準の安全性を目指す」というが、いくつかの電力会社は、一日でも早く原発を動かそうと、早々に再稼働を申請する見込みだ。新基準を現状で全て満たす原発はないが、電力各社には、別の設備での代用や多少の後回しは許されるとの打算がちらつく。福島の原発事故が収束の見通しも立たない中で、電力会社の経営や電力需給を理由にした安易な再稼働は許されない。

◆事故 多重の備え義務化

 新基準は、東京電力福島第一原発事故の反省から、地震や津波対策を強化した。
 原発ごとに最大級の津波を想定し、防潮堤や防水性の高い扉で重要機器を守ることを義務化。「活断層上の原発の運転禁止」も明記した。予想外の揺れに襲われないよう、敷地の地下構造を三次元的に詳しく調べることも要求する。
 事故時の指揮所として、地震や放射能に耐える作業拠点を整備し、放射性物質を最小限にとどめつつ、格納容器内の水蒸気を抜いて圧力を下げるフィルター付きベント(排気)設備の設置も求める。
 電源喪失に備え、外部電源を多重化し、非常用発電機やバッテリー、電源車も複数用意する。航空機テロなどに備え、通常の制御室とは別に単独で原子炉の冷却を続けられる第二制御室も求める。
 一方、対策は原発内だけでは不十分。新基準とは別に、原発の半径三十キロ圏の自治体には、避難計画やモニタリング体制などの整備、内部被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の事前配布や備蓄が求められる。

◆「大飯に続け」 のぞく打算

 先を争うように再稼働申請しようとしているのは北海道、東京、関西、四国、九州の五電力。比較的新しい計十四基が申請対象になりそうで、うち十二基までが福島第一のような沸騰水型ではなく、加圧水型が占める。
 このタイプは、沸騰水型より原子炉格納容器が五倍ほど大きく、フィルター付きベント(排気)設備は五年間の猶予期間が設けられた。その分ハードルが低く、早期の申請につながっている。
 ただ、事故時の指揮所になる作業拠点を整備済みなのは、伊方原発だけ。津波を防ぐ防潮堤も大半が未完成。新基準では、複数の断層が連動することを前提とした想定地震の見直しや、敷地の地下構造を三次元的に詳しく調べることも要求されるが、新たに実施した原発はない。
 それでも電力各社が強気に申請の構えを見せるのは、一部の対策不足がありながら、規制委が大飯3、4号機の運転継続を認めたことが影響している。
 大飯原発では事故時の作業拠点は建設中だが、規制委は1、2号機が停止中であることを前提に、1、2号機の会議室で代用を認めた。地下構造の調査も不十分だが、本番の審査で中長期的にやればよいとなった。
 こうした流れを見た電力各社は、“大飯方式”に続けとばかり、作業拠点を別施設で代用し、再稼働申請する方針だ。
 関電は高浜3、4号機で大飯と同様、1、2号機の会議室(約百十平方メートル)を使う。北海道電は未定。九電は玄海、川内とも正式な作業拠点が完成するまでのつなぎとして代用の建物を九月までに急きょ造るという。
 想定地震の見直しや地下構造調査も「審査の中で必要があれば検討する」(四国電)などと、規制委の出方をうかがうような様子がありありだ。

◆ ハードを先行「信頼」後付け

 すぐに申請が出るのは加圧水型ばかり、とみられていたが、そこに東電が、沸騰水型の柏崎刈羽6、7号機を再稼働申請する方針を明らかにした。
 二基とも運転開始から二十年未満で、二〇〇七年の新潟県中越沖地震を受け、耐震性を強化し、免震性能のある作業拠点を真っ先に整備した。福島第一原発事故後に防潮堤が完成、ベント設備の工事も始まっている。ハード面だけなら、対策はかなり進んでいる。
 しかし、重大事故を起こした当事者が、事故収束のめども立たないのに、原発を動かす資格があるのかとの批判も強い。
 地元への説明もないまま申請方針を決めた東電の姿勢に、新潟県の泉田裕彦知事は「信頼関係を完全に破壊する行為だ」と猛反発した。原発で重大事故が起きれば影響は広範囲に及ぶ。単に設備面の新基準がクリアされるだけでなく、地元が理解し、防災の備えも整えることが不可欠だ。

福島第一に押し寄せる大津波(東電提供)

◆40年廃炉に「例外」抜け道

 新基準と同時に施行されるもう一つのルールが、原発の運転期間を原則40年に制限する制度(40年廃炉)だ。老朽化した原発をなくすのが目的。ただし、1回に限り最大20年間の運転延長を認める例外規定も盛り込まれている。
 運転延長が認められるためには、格納容器や建屋のコンクリートのはぎ取り検査をし、老朽化の影響がないかどうかを調べる「特別点検」をクリアすることが不可欠となる。目視中心の従来のチェックよりは厳しくなる。
 8日に制度が始まると、運転開始から37年目以上の7基について、電力会社は運転延長を目指すかどうか早急に判断を求められる。2年以内に延長を申請し、3年以内に特別点検に合格しなければ、運転停止か廃炉を迫られる。
 ただ、運転継続のためには、特別検査に合格するだけでなく、新基準で求められる設備も備える必要がある。大規模改修が必要となることが見込まれ、費用面から廃炉を選ぶ電力会社も出てきそうだ。


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