不可解な「過去分請求」 福島賠償で新電力も負担案 

 経済産業省は二日の有識者会合で、二〇一一年に起きた東京電力福島第一原発事故で膨らむ賠償費用の一部を、原発を持たない新電力の契約者も含めて「過去に原発に対して支払うべきだった費用」として「過去分」の負担を求める方針を示した。通常の買い物では会計を終えた商品に過去の費用が加わって請求されることはあり得ない。消費者の反発を招きそうだ。(吉田通夫)

東電破綻を避け、賠償費用の捻出が狙い

 賠償費用は、政府などでつくる「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に対し、東電と原発を持つ大手電力会社が負担金を納める仕組みが二〇一一年八月にできた。実質的には電気料金を通じて消費者が負担している。新電力の契約者は負担していないが、経産省は「原発を利用していた過去に支払うべき費用だった」と負担を求める構えだ。新電力の契約者にとってみれば、大手電力会社に対して支払いを終えた商品に後から負担が加わり、別会社と契約した後に請求される形になる。
 「過去の費用」を後から請求する手法は通常の買い物ではあり得ないが、電気料金をめぐっては前例がある。経産省は〇五年に、使用済み核燃料を再利用する事業の費用が膨らむ見通しになったため、上乗せする制度を導入。すでに企業向けの電力販売に参入していた新電力は猛反発。〇四年に開かれた経産省の有識者会合「制度・措置検討小委員会」で、新電力ダイヤモンドパワーの幹部は「一年前に食事したレストランから急に連絡を受けて『代金に調味料のコストが入っていなかった』と請求されても、受け入れられない」などと強硬に抗議した。最終的に経産省に押し切られたが「『過去分』というのは今回で最後にしてほしい」とくぎを刺した。
 しかし今回も、経産省は東京電力を破綻させることなく賠償費用を工面するため、「過去に原発を利用した費用」との理屈を持ち出し、幅広い消費者に負担させる方向にかじを切った。
 原発を持たない新電力の契約者にも原発にかかる費用を負担させることについて、新電力最大手の東京ガスの広瀬道明社長は十月六日の記者会見で「個社でかかった費用はその社の料金に反映するのが基本。契約者に(原発の費用負担を)理解してもらうのは難しい」と難色を示した。
 福島第一原発の廃炉費用処理も理不尽さが目立つ。
 東電は廃炉費用は自社の利益から出すとしている。だが、経産省は一定以上の利益が出た場合は値下げ義務がある送配電料金について「高止まり」を容認する特別ルールによって、利益をためさせる方針。消費者の家計負担を高いままにして、東電を無理に「もうけさせる」わけで、表面上は東電の負担でも消費者の財布から出ているのと変わりない。

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