大型連休のころになると、福島県の浜通り地域は本格的な山菜シーズンを迎える。食文化と深く関わってきた山菜だが、東京電力福島第一原発事故で山野が汚染され、安心して食べられる状況ではなくなった。本紙は飯舘村と楢葉町で定点調査を続けてきた。事故から11年、山菜に含まれる放射性セシウム濃度の調査結果を報告する。(山川剛史)
調査は、地点を定め、茎の折る位置も同じようにして推移を観察し続けてきた。山菜は丹念に洗って水切りをし、調理する直前の状況を想定し、放射能測定器で最低4時間かけて測定した。
経過をみると、徐々にではあるが年月とともに山菜の汚染度が下がってきていることがうかがえる。ただ、山中は除染などはほぼ手付かずで、放射能が半減するまで30年かかる放射性セシウム137が汚染のほとんどを占めるため、急速な改善は見込めない。
安定的に食品基準(1キログラム当たり100ベクレル)を大幅に下回る山菜もあるが、大なり小なり汚染があり、食用にするには注意が必要だ。
浜通りでは、切り刻まなくても15分ほどで結果の分かる非破壊式の放射能測定器の配備が住民向けに進められている。こうした機器を活用して汚染度合いを確認することが大切。本紙のこれまでの調査で、重曹水につけたり、ゆでたりすると、あくと一緒に何割かセシウムが抜ける。塩漬けにした後、水にさらして塩味がなくなるまで塩抜きをすると、ほとんどセシウムはなくなることも確認できている。天ぷらはほとんど低減効果がない。
山野のものは測ってみないと分からないー。あらためて認識させられるデータが、本紙調査の協力者である飯舘村の伊藤延由(のぶよし)さん=写真=から届いた。
ゼンマイ(前田1~7)は同じ畑だがセシウム濃度は54倍もの開きがある。コゴミも同じ場所だが、採取日が異なるだけ。移行度合いが小さいはずのシドキも、本紙の定点ポイントと1キロほどしか離れていないが10倍以上も濃度が高かった。