日本の原発はどうなる?エネルギー基本計画の見直し案が示していること

 東京電力福島第一原発事故から10年半が過ぎ、日本の原発はどうなっていくのか-。菅義偉政権は見直しを進める政策の指針「第6次エネルギー基本計画案」で、原発を温室効果ガスの排出削減に必要な電源と位置付けて再稼働を推進する構想だが、現状では絵に描いた餅でしかない。一方で「可能な限り依存度を低減する」とし、自民党や経済界が強く求める原発の新増設に踏み込まなかった。主なポイントを整理した。(小川慎一)

実現が厳しい「原発20~22%」

 政府は、2030年度の総発電量に占める原発の割合を20~22%とした。18年に定めた現行計画と比率は変わらないが、今回の計画案では総発電量を1割削減しているため、目標とする原発の発電量は減ることになる。
 経済産業省によると、目標達成には30基程度の稼働が必要だ。原子力規制委員会の審査で、福島第一原発事故後にできた新規制基準に適合した原発は10原発17基。これまでに再稼働したのは、西日本に立地する6原発10基にとどまっている。
 規制委では7原発10基(建設中の2基を含む)の審査が続くが、長期化で終わりが見通せない。審査未申請の4原発8基が仮に30年度までに新基準に適合したとしても、稼働できる原発は計35基と余裕がない。
 新基準に適合しても、東電柏崎刈羽原発(新潟県)や東日本大震災で被災した日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)のように、再稼働の地元同意を得られるか不透明な原発もある。
 政府の掲げる目標は、審査、事故対策工事、地元同意など全てが順調に進まない限り、到底達成できない。

進む原発の老朽化 「新増設」盛り込まず

 福島事故前は54基の原発が稼働していたが、廃炉が進み33基に減った。2000年代に運転を開始したのは5基しかなく、新増設も止まっているため老朽化が進んでいく。
 政府は福島事故後、原発が稼働できる期間を運転開始から原則40年と定め、規制委が認めれば「1回に限り最長20年」の運転延長ができるルールをつくった。30年中に、33基のうち約半分の15基が運転から40年を迎え、電力会社は廃炉か運転延長かを選ぶ必要がある。政府目標の実現には、ルール制定時に「例外中の例外」とされた運転延長が不可避で、電力会社は老朽化対策のために巨額の投資も迫られる。
 自民党や経済界からは、米国のように60年を超えて運転できるよう求める声も出ている。計画案では「長期運転を進めていく上での諸課題について、官民それぞれの役割に応じ、検討する」という記載にとどめた。
 また、政府は原発の「新増設」の明記を見送った。電力会社は8原発11基の新増設計画を維持するが、着工済みは電源開発大間原発(青森県)、東電東通原発(同)、中国電力島根原発3号機(松江市)のみ。島根以外は福島事故後に工事が中断したままで、完成のめどが立っていない。

「破綻」していても推進 核燃料サイクル政策

 政府は、使用済み核燃料を繰り返し再利用できるとした「核燃料サイクル政策」の推進を維持する。要だった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉決定で政策の破綻が明白となってからも、一向に見直しが進まない。
 核燃料サイクルは再処理工場で核燃料からプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜて混合酸化物(MOX)燃料にして原発で使う仕組み。将来的に、MOX燃料の再処理も計画している。
 だが、日本はプルトニウム約46トン(英仏保管分37トン)を保有。こちらの削減が優先で、再処理の必要がない。
 MOX燃料のみを使う電源開発大間原発(青森県)は建設中で、稼働時期は不透明。普通の原発でMOX燃料を使う「プルサーマル発電」ができる原発は現状四基。2030年度までに12基に増やす目標も達成は見通せない。
 政策の総事業費は膨らみ続けており、16兆円超。電気料金を通じて消費者が負担しており、政府が宣伝する「夢」の代償が将来世代の重荷にもなる。
 政府は原発新増設を打ち出さなかった一方、小型原子炉などの研究と開発は進める。中でも、次世代原子炉として期待されているのは高温ガス炉。日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉「HTTR」を使い、発電ではなく、温室効果ガスを排出しない水素の製造の実用化につなげようとしている。
 原発から出る「核のごみ」の最終処分場は、依然として決まっていない。

再生エネを「最優先」 10月4日までパブリックコメント

 政府はエネルギー基本計画案について、10月4日まで国民から意見を募る。その後に約2週間かけて最終案をまとめ、閣議決定する予定だ。
 再生可能エネルギーは主力電源化へ「最優先の原則で取り組む」とし、二酸化炭素(CO2)を大量排出する石炭などの火力発電は縮小する。
 意見は、経産省資源エネルギー庁の「総合資源エネルギー調査会」のページから

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