老朽原発・美浜3号機が10年ぶりに再稼働 抗議、不安、にじむ期待

 運転開始から40年を超えている関西電力美浜原発3号機(福井県)が、6月23日の再稼働後に発送電を始め、7月4日からフル稼働している。福島第一原発事故を教訓に運転期間は法律で原則40年となったが、「例外中の例外」の延長運転に国内で初めて入った。周辺住民からは老朽原発の稼働に抗議や不安の声が上がる中、10年ぶりの稼働による経済効果への期待もにじむ。

再稼働した関西電力美浜原発3号機(手前)。左奥から1、2号機=福井県美浜町で、本社ヘリ「まなづる」から

怖さはある。でも出て行くわけには…

 小さな集落が散在する美浜原発3号機の近くには、青く澄んだ海に面してきらめく砂浜が広がる。水晶浜と呼ばれる北陸有数の海水浴場だ。夏本番に向け、浜茶屋の組み立てが進む。二キロ北側には、円筒形の原子炉三基が並んでいる。

 「50年もあればなじんだ光景」。福井県美浜町の竹波区ですし店を営む沢田忠義区長(61)は話した。

 原発建設で道路が整備されると、中京や関西から海水浴客がやって来た。1970年に美浜1号機が関電初の商業炉として運転を始め、2、3号機と増設されると、定期検査ごとに多くの作業員も押し寄せた。

 最盛期の90年代は町内に200軒以上の旅館や民宿が林立した。その後、レジャーの多様化などで海水浴の宿泊客が減ると、利用が安定した原発作業員のみを受け入れる宿が増えた。

 町は潤った。その一方で、産業は原子力頼みとなっていった。関電の元社員で美浜町議を五期務めた山崎俊太郎さん(81)は「原発があったせいで、他の産業が育たなかった。原発でずっと食べていけると、甘い考えがあった」と嘆いた。

水晶浜で再稼働について話す沢田区長。奥に見えるのが、関西電力美浜原発(左から)3号機、2号機、1号機=福井県美浜町竹波で

50年原発に依存 町に地場産業を興す地力はない

 2011年の東京電力福島第一原発事故で、町も一転した。原発への国民の信頼は崩れ、美浜原発も長期停止となり、原発関連業者は痛手を受けた。15年には1、2号機の廃炉が決まった。95年に1万2千人が暮らした町の人口は、20年には9173人となり、高齢化も進む。

 竹波区では、作業員が利用していた民宿が14、5軒から3、4軒に激減した。沢田区長は「町からいっぺんに人が消えたような感じ」と10年間を振り返る。

 美浜原発の再稼働には作業員らが戻り、地元が活気づくと期待する。ただ、稼働は三基のうち一基のみ。地元経済を支える力強さに欠けるとも感じている。

 全国初の40年超運転を前に、沢田区長は何度も構内を視察した。「防潮堤などが建設され、さらに安全になった。ただ怖さはある。でも出て行くわけにもいかない」と割り切る。

 3号機も運転期限は最長60年まで、残り15年ほど。美浜町は原発の新増設やリプレース(建て替え)を期待しつつも、廃炉に伴う原発関連収入の減少に備える。3月改定の町エネルギービジョンでは、太陽光発電を使った電池推進船の就航など再生可能エネルギーによる地域活性を図る。

 それでも沢田区長は、「50年も発電所に頼ってきた町に、地場産業を興す地力なんかない。5年、10年後にきっと4、5号機が増設される。その時、にぎわいが戻ってくる」と信じる。(高野正憲)

美浜原発3号機(奥)を背に、再稼働に抗議する参加者ら。県内外から約350人(主催者発表)が集まった=6月23日、福井県美浜町で

福島事故が忘れられ…いま一度原発を考える時

 越前市西部の坂口地区。国の特別天然記念物コウノトリが野外繁殖する地域に住む会社員の川端小右衛門さん(66)は「そのまま廃炉にするより、使えるものは使えば良い」と考える。40年超運転の安全性は国と事業者を信用するしかないとした上で、「風力は低周波、太陽光は雨水排水など、どのエネルギーにも一長一短がある」と冷静だ。

 美浜原発は1、2号機が廃炉作業中で、稼働できるのは3号機のみ。原発は現状、最長60年の運転が認められているが、このまま新増設やリプレース(建て替え)がなければ、原発は地域から姿を消す。

 敦賀市内の女性(77)は「何基必要かは社会情勢によるが、少なくとも古い原発は最新型に建て替えた方が安全なのでは」とみる。

 南越前町の自営業男性(41)は、原発の安全基準が適正かどうか分からないと指摘。既存原発の活用は容認の立場だが、新増設には「違うエネルギーを考えた方が良い」と言い切った。

 再稼働に反対する若狭町海士坂の農業、島光毅さん(41)は「安全だと言う人もいるが、そうは思わない。福島のような事故が起きて住めなくなると困る」。延長運転には「原則40年というルールだが、他の原発にも次々に認められていくことになれば骨抜きになるのでは」と不安視する。

 美浜3号機の再稼働前に、行政から避難計画の周知などは特になかった。「福島の事故が忘れられ、人ごとのような雰囲気を感じる。いま一度、原発について考えていく時期なのでは」(栗田啓右、中田誠司)

2021年7月4日時点

関電が3原発5基同時運転 新基準下では初めて

 福井県内では7月3日、配管に傷が見つかり長期停止していた関電大飯原発3号機(おおい町)が再稼働した。東京電力福島第一原発事故後の新規制基準下では初めて、関電の3原発5基が同時運転している。

 県内の原発15基のうち、敦賀市にある日本原子力発電(原電)敦賀1号機など7基で廃炉作業が進む。

 美浜3号機と同時に再稼働の地元同意を得た高浜原発1、2号機は、設置が義務付けられているテロ対策の特定重大事故等対処施設(特重施設)が未完成。完成時期も未定で、再稼働の見通しは立っていない。美浜3号機も特重施設の完成遅れで、設置期限前の10月23日には停止する。

 敦賀2号機は原子力規制委員会の審査で地質データの書き換えが発覚し、検査を受けている。原子炉建屋直下に地震を起こす活断層の存在が指摘されており、その判断が確定すれば廃炉となる。(浅井貴司)

美浜原発3号機とは?

関西電力美浜原発3号機1976年12月に営業運転を開始し、44年半が経過している。2004年8月にタービン建屋で配管破裂による蒸気噴出事故が発生し、作業員11人が死傷した。沸騰水型軽水炉の東京電力福島第一原発とは異なる加圧水型軽水炉で、出力は82万6000キロワット。1号機は関電初の原発として1970年に運転を開始し、2号機とともに2015年3月に廃炉が決まった。

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