「混乱するのが見えている」30キロ圏に28万人 広域避難不安拭えず 老朽・美浜原発3号機再稼働

 運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)が6月23日、10年ぶりに再稼働した。重大事故が起きた場合、避難対象となる30キロ圏内には再稼働した原発では最多の28万人弱が暮らす。県内外へ避難が計画されているが、避難先の確保など実効性に疑問符が付いたままだ。(今井智文)

再稼働した美浜原発3号機=2021年6月23日、福井県美浜町で

 中心市街地が30キロ圏内にある福井県越前市は人口約8万人。2019年8月に初の広域避難訓練が行われ、今年1月には国の避難計画がまとまった。美浜3号機で重大事故が発生すれば、北に位置する同県坂井市やあわら市、石川県小松市や能美市へ避難する。
 県や市の計画では、地区ごとに避難先の小中学校や公民館が細かく設定され、病院の入院患者や高齢者福祉施設の入所者などの搬送先も決められた。
 しかし、福祉施設からは懸念の声が上がる。障害者施設で入所者の避難を担当する40代女性は「施設で毎年訓練をしているが、実際の避難では手伝う人も車両も足りず混乱するのが目に見えている。着の身着のまま逃げたとしても、布団などの物資はどうなるのか」と表情を曇らせた。

実効性ない計画なら…水戸地裁は運転禁じる判決

 広域避難を巡っては、30キロ圏に国内最多の94万人を抱える日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)について、水戸地裁は3月、運転を禁じる判決を出した。市町村で避難計画の策定が遅れており、実現可能な避難計画がなければ運転を認めないという基準が示された形だ。
 福井県の担当者は美浜原発について「東海第二とは状況が違う。避難に使用するバスや避難先などをしっかり確保できる計画になっている」と強調する。

 ただ、美浜原発周辺の避難人口は、既に再稼働した福井県内にある2原発よりも多い。住民を避難させる場合に県内にあるバスの3分の1にあたる278台が必要となるなど、一段とハードルが高い。
 新型コロナウイルスの感染拡大で避難の難しさはさらに増した。人が密になるのを避けるためにバスの台数を増やし、避難所で避難者が間隔を空けることを避難計画に盛り込んだ。だが、昨年8月に関電大飯原発(福井県おおい町)などで行った訓練では、避難所の収容人数が減り、新たな避難場所の確保が必要になるという課題も浮かんだ。
 今年1月には福井県内の記録的大雪で、避難で使う国道8号や北陸自動車道で車の立ち往生が発生し、長時間通行できなくなった。福祉施設の責任者を務める50代男性は「計画で避難先が決まっていても実際に役に立つのか分からない。いざとなったら入所者は計画とは別の県外施設へ避難させる」と話した。

関西電力美浜原発3号機

1976年12月に営業運転を開始し、44年半が経過している。2004年8月にタービン建屋で配管破裂による蒸気噴出事故が発生し、作業員11人が死傷した。沸騰水型軽水炉の東京電力福島第1原発とは異なる加圧水型軽水炉で、出力は82万6000キロワット。1号機は関電初の原発として1970年に運転を開始し、2号機とともに2015年3月に廃炉が決まった。

関連記事