再稼働の賛否分かれる 浜岡原発がある静岡・御前崎市で市民120人アンケート

 中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)が政府要請で停止し、5月14日で10年を迎えた。中日新聞東海本社(浜松市東区)は立地市の御前崎市民120人にアンケートし、再稼働の賛否などを尋ねた。再稼働に「賛成」は43.3%、「反対(停止した状態でいい)」は39.2%で、民意が2分していることが浮き彫りになった。牧之原、掛川、菊川の隣接3市が行ってきた各市民意識調査では反対が多数を占めており、立地市ならではの複雑な市民感情が表れた形となった。(河野貴子、高橋雅人、酒井健、中田弦)

 アンケートは4~5月、御前崎市内の市役所周辺や公園など各所で10~80代の有権者男女各60人に実施。対面での聞き取りと質問紙の配布方式で、再稼働についての賛否の他、浜岡原発で大きな事故が起きた場合に備え市が策定した広域避難計画を知っているかなど計6項目を尋ねた。

 男女別の再稼働への賛否をみると、男性では賛成が51.7%、反対が36.7%と、賛成が15ポイント上回った。一方、女性は賛成が35.0%、反対が41.7%で、反対が6.7ポイント多かった。

 性別と年代別で集計したところ、男性は10~60代の各世代で軒並み賛成が反対を上回った。女性は50、60代で反対意見が目立った。

 賛成の理由として挙げられたのは「地元への経済効果が大きい」(40代会社員女性)、「子どもの頃から存在して動いていた」(50代会社経営男性)。反対理由は「直下型地震に設備が耐えられるか疑問」(60代会社役員男性)、「核のごみの処理方法が決まっていないし電気は足りている」(70代調理師男性)などだった。

 結果を御前崎市に伝えたところ、担当者は「新規制基準の適合性確認審査中である現段階では、再稼働を議論すべきではない」と回答した。

 原発の地元4市のうち、御前崎を除く牧之原、掛川、菊川の3市は2011~14年度から年1回、市民意識調査の中で浜岡原発再稼働への考えを聞いている。3市とも一貫して反対(廃炉や停止継続)の意見が最も多く、20年度は反対が賛成を15~21ポイント上回った。

賛成半数にいかず 福島第一原発事故の影響大きい

河本尋子・常葉大大学院准教授(災害心理学)の話 原発立地自治体では再稼働賛成が反対を上回る傾向がみられ、本結果にも当てはまる。近隣自治体で逆に反対が上回るのも、他原発と同じ状況。立地自治体は市民の多くが原発と何らかの関係があり、原発が落とすお金もある。国が行ってきた安全PRの成果もある。

 注目したいのは、賛成が半数に達していないこと。福島第一原発事故の影響が大きいのだろう。20、30代の若年男性が賛否の判断をしかねている。この層が判断できない理由を明らかにするとともに、国と県、市、事業者による災害、テロ対策の徹底と周知が不可欠だろう。

広域避難計画を4割は知らず

 また、原発の重大事故に備えて市が2017年に策定した「広域避難計画」を知らない市民が4割近くに上った。4年を経てもなお周知に課題が残る。

 「計画」では原子力災害だけが起きた場合、市民は浜松市へ逃げる。地震、津波なども同時に起きた複合災害の場合は、市民は長野県に避難する。

 アンケートでは「計画.避難先のどちらも知らない」と答えた市民が最多の36.7%となった。「計画しか知らない」は35.8%、「計画.避難先とも知っている」は27.5%だった。

 実際に、事故が起きた場合に避難する上での不安を、八つの選択肢から複数回答可の条件で選んでもらった。半数を超える63人が「地震による道路の損傷や交通渋滞」を選んだ。次いで「避難の長期化」(55人)、「避難先.ルートをよく知らないこと」(53人)が続いた。「事故自体起きると考えていない」(50代会社員男性)といった声がある一方、「家族が車いすの利用者。避難は無理」(70代主婦)と、避難を諦めているともとれる回答もあった。

 中電による海抜22メートルの防潮堤建設や非常用電源設備といった安全性向上の取り組みを、どう評価しているかも尋ねた。「十分評価できる」と「それなりに評価できる」は計76.3%。「実際に工事を間近で見て安心感が増した」(40代会社員女性)と答えた市民がいるのに対し、「防潮堤が高い分、他の所に津波が回るのでは」(70代無職男性)と懸念の声もあった。

 アンケート結果に対し、中電は「世界一安全な原発の実現に向けて取り組みを重ねている。適合性確認を早期にいただけるよう最大限努力し、防災体制の整備や一層の充実を図りたい。丁寧に説明し、一層信頼いただける発電所を目指す」とコメントした。

 停止により暮らしに何らかの影響があったかどうかを尋ねた質問では、84.7%が「影響はなかった」と答えた。

浜岡原発とは?

1976年に1号機が運転を開始し、2005年までに5基建設。08年に1、2号機は廃炉決定し、6号機建設計画が浮上も11年の東京電力福島第1原発事故で棚上げに。3、4号機は再稼働に向け原子力規制委員会が審査中。5号機は11年5月に海水が原子炉に流入するトラブルがあり、審査は未申請。

稼働停止から10年が過ぎた中部電力浜岡原発=静岡県御前崎市で、本社ヘリ「おおづる」から

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