東京電力福島第一原発事故による、福島県の山菜への放射性セシウム汚染はどんな状況なのか。本紙は飯舘村と楢葉町で定点調査を続けてきた。事故から10年後の2021年春の結果を報告する。(山川剛史)
これまでの推移をみると、徐々にではあるが濃度は下がる傾向が確認できる。年月の経過とともに、生育土のセシウム濃度が下がるとともに、セシウムが土の粒子と強く結合し、植物が吸い上げにくくなっていることが要因と考えられる。
タラの芽やシドキは生育土が汚染されていても、セシウムを取り込む度合いが低い。調査対象にはしていないが、フキやウドも取り込み度合いが低い。
明るい兆しは確かにある。ただし、基本的に山野は手が入っておらず、今後も除染が実施される予定はない。放射性セシウムのほとんどは半減期が30年の放射性セシウム137となり、山菜の状況が早期に改善していく可能性は極めて低い。
与党は「山菜の摂取量は少ない」とし、山菜などの食品基準(1キログラム当たり100ベクレル)を緩和し、出荷規制を解除する要件もゆるくする動きが出ている。
あく抜きでセシウムは低減できるが、ある程度は残る。摂取量は個人差が大きい。山野の恵みはまだまだ要注意であることに変わりはない。
山菜の多くは、お湯に重曹を溶かしてあく抜きしたり、塩漬けにして長期保存することが多い。重曹や塩の作用でセシウム濃度がどう変化するのか調べた。(通常、こうした処理をしない山菜も含めて調べた)
重曹はお湯に0.5%の分量を溶かし、12時間さらした後、さらに12時間、水を取り換えながらさらした。
塩漬けは24時間漬けた後、塩味がしなくなるまで水を取り換えて塩抜きした。