日本原子力研究開発機構は9月29日、廃止措置中の東海再処理施設(茨城県東海村)の高レベル放射性廃液貯蔵建屋(HAW)周辺で始まった地盤改良工事を報道陣に公開した。新規制基準を踏まえ、耐震性を高めるのが狙い。高レベル廃液は極めて放射能レベルが高く、漏えいリスクを早期に減らす必要があるため、廃止措置計画の中でも最優先工事に位置付けられている。(宮尾幹成)
工事は8月17日にスタート。HAWとガラス固化技術開発施設(TVF)の間の土地で表土を約6メートル掘削し、地盤から4メートルの高さまで十分な強度のコンクリートを打設した上で、土を埋め戻す計画だ。HAWからTVFに高レベル廃液を移送する配管が通るトレンチ(溝)の耐震性向上も併せて実施する。工期は2021年度末までを予定している。
この日は、作業員がスコップで地面を掘り起こし、埋設物を確認する作業などに当たっていた。
東海再処理施設は18年から廃止に向けた工程に入っているが、HAWには約360立方メートルの廃液が残されたまま。原子力機構は昨年7月、廃液をガラスと混ぜて化学的に安定した「ガラス固化体」を製造する作業を2年ぶりに再開したものの、ガラス溶融炉のトラブルで中断した。
ガラス固化の再開は21年5月ごろになる見通し。機構は、製造済みの316本を含め約880本分のガラス固化を28年度までに終えるとした当初の計画を変更していない。
一方で、原子力規制委員会の東海再処理施設安全監視チームは廃液の長期保管リスクを懸念し、再開時期の前倒しの検討と地震・津波対策の強化を求めていた。
機構はこのほか、HAWとTVFの建屋内への津波による浸水を防ぐため、浸水防止扉をコンクリートで補強する工事に年内に着手する。また、津波で流された船舶や車両、大型タンクなどが建屋外壁に衝突するのを防ぐ防護柵を、来年度以降に設置する。
さらに、TVFの「第2付属排気筒」の耐震性を高める補強工事を、来年5月末までに終える計画だ。
東海再処理施設は1977年に試験運転を始め、2007年までに新型転換炉「ふげん」(福井県敦賀市、廃炉)などの使用済み核燃料約1140トンを再処理した。機構は、11年の東京電力福島第一原発事故後に施行された新規制基準への対応に多額の費用がかかるとして、運転再開を断念。18年6月に廃止措置計画が認可された。
廃止完了までには約70年を要し、総費用は約1兆円に上る見通し。大半は国費で賄われる。海外でもほとんど前例のない作業で、工期や費用は膨れ上がる可能性もある。