ふくしまの10年 見えない放射能を描く ⑦誰の物でもない黒い袋

無主物は見えないから 無主物は臭いがしないから

 東京電力福島第一原発から南へ約7キロ、富岡町小良ケ浜(おらがはま)のかつての水田地帯には、国道6号から海岸線まで黒いフレコンバッグの山が約2キロにわたって続く。町内の除染で出た汚染土は、この地に集中的に仮置きされている。
 イラストレーターの鈴木邦弘さん(46)が描いたのは2019年4月の情景。タイトル中の「無主物」は、東電が訴訟で、福島第一から放出された放射性物質は、所有者のいない「無主物」だと主張したことへの皮肉を込めた。
 鈴木さんは、その5カ月前に初めてこの地を訪れた。その際、近くに帰還したという男性と出会った。
 「ここはイノシシもサルも出るから気をつけなよ。マスクも手袋も忘れるな」。男性は鈴木さんにこう諭した。
 話すうち、男性は元原発作業員で、子や孫は埼玉県に避難中と明かした。「俺はふるさとがいいから帰還したが、孫らは連れてこられない。俺の家は俺の代で終わりだ」と悲しそうに話したという。
 鈴木さんはことし3月に再び訪れた。汚染土を管理する中間貯蔵施設(大熊、双葉両町)への移送が進んだか確かめようと思ったが、あまり減っていないように感じた。所管する環境省のデータでは、発生量の半分強が移送済み。それでも、まだ65万立方メートルという膨大な「無主物」がこの地に残されている。

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