ふくしまの10年 マスター、もう少し聞かせて ⑧エゴマ 山あり谷あり

エゴマの種を収穫する石井絹江さん=浪江町で

 福島県浪江町でシソ科のエゴマ栽培に情熱を傾ける石井絹江さん(68)と名刺交換したのは、福島大学の元学長が中心に運営している「ふくしま復興フォーラム」の会場だった。月2回程度、市内の会議場で開催される復興に関する勉強会で、石井さんはエゴマ栽培について講演。その内容に興味を引かれた。
 東京電力福島第一原発事故の発生当時、石井さんは浪江町役場の職員だった。許可なく立ち入りできない帰還困難区域に指定されている同町津島に住んでいたが、事故で福島市内に避難。5年後、町東部に除染した農地を借り、エゴマ栽培を始め、通いながら栽培を続けている。
 種を絞ったエゴマ油は体によいとされ、浪江では昔から盛んに栽培されてきた。そんなエゴマを通じ、町のお年寄りたちを元気づけようと、福島市内に加工場をつくり商品化を進めた。
 2018年12月、石井さんの試みを本紙に掲載したところ、首都圏や中部地方から購入希望などが相次いだ。活動が軌道に乗ったが、昨年10月の台風19号とその後の大雨の影響で、エゴマ畑は大打撃を受けた。
 今年4月に入ってから石井さんに、その後の状況を尋ねたところ、明るい声が聞こえてきた。
 「エゴマが流されたことをテレビ番組で知った白河市の方がエゴマを格安で譲ってくれました。これで昨年通り、気合を入れてエゴマ製品を作ることができます」
 農産物の販売促進のため、東京都庁まで車で商品の販売に向かう石井さん。前を向いている人に、人は集まるのだと思う。

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