どうする汚染処理水 福島第一 東電が処分方法案を公表

 東京電力は3月24日、福島第一原発の汚染水を浄化処理した後の水について、処分方法の検討案を公表した。政府の小委員会の報告書を受け、浄化処理装置でも取り除けない放射性物質トリチウムが主に残る水を、大量の海水や空気で濃度を薄め、30年程度かけて放出処分するという内容だ。政府の方針決定を控え、徐々に処分方法の中身を具体化してきた。(渡辺聖子)

構内にはタンク約1000基が立ち並ぶ=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で、本社ヘリ「おおづる」から

トリチウム排出基準、国の40分の1に

 検討案では海へ放出する場合、トリチウムの濃度を1リットル当たり1500ベクレル未満にすると設定。国の排出基準の40分の1に相当し、福島第一で原子炉建屋などに入り込む前にくみ上げて海へ放出している地下水の基準と同じレベルとした。
 これは、海洋放出案に強く反対する地元漁業者を念頭に置いたのは明らか。しかし、地下水に含まれるトリチウムはもともと1500ベクレル未満なのに対し、浄化処理後の水は海水で薄めないと基準を満たせない。

海洋放出なら500倍以上希釈

 タンクで保管する処理水のトリチウムの平均濃度は、1リットル当たり約73万ベクレル。これを40分の1まで下げるには500~600倍に薄める必要があり、ポンプで海水をくみ上げ、処理水に混ぜて海に流す。薄めるのはあくまでも計算上の話で、混ぜた後に濃度を確認して放出するわけではない。
 大気への放出も同様に計算上の希釈をして、空気1リットル中5ベクレル未満とする。
 どの方法で放出するとしても、保管する処理水の7割に、トリチウム以外の放射性物質も国の基準を超える濃度で残っている。そのため、東電は既存設備で再浄化する方針で、2020年度から試験を始める。

検討案を説明する東電福島第一廃炉推進カンパニーの松本純一・廃炉推進室長(左)=東京都千代田区の東電本社で

放出設備の準備に2年以上、風評被害には賠償も

 東電福島第一廃炉推進カンパニーの松本純一・廃炉推進室長は検討案公表の会見で、事故収束が終わった時点で「処理水、タンクが片付いているべきだ」との認識を示した。
 ただ、国と東電が目標とする事故収束まで残り30年。設備の準備に2年以上かかる見通しの中、タンク内には現時点で860兆ベクレルのトリチウムがある。東電が事故前に管理目標値としていた年22兆ベクレルの放出では、30年以上かかるため、それ以上の量を放出する可能性が高い。
 海洋放出では、トリチウムが拡散する海域も予測した。放出前の福島県沖のトリチウム濃度は1リットル当たり0.1〜1ベクレル。この濃度が1リットル当たり1~10ベクレルになる海域は、年22兆ベクレルの放出で福島第一の南北に約1.5キロ、沖合約0.7キロ。年100兆ベクレルの放出で、北約10キロ、南約20キロ、沖合約2キロにまで広がるという。
 福島第一の半径10キロ以上の海域では、漁業の試験操業が進んでいる。「風評被害」が発生した場合の賠償方針も示したが、対象や内容は「検討中」とした。

トリチウムとは?

放射能を帯びた水素で、酸素と結合してトリチウム水になる。普通の水と分離するのは難しく、汚染水を浄化している多核種除去設備でも取り除けない。放射線(ベータ線)は比較的弱く、人体に入っても大部分は排出される。放射能は12.3年で半減

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