<東海第二原発 再考再稼働>環境経済研究所代表・上岡直見さん「複合災害想定 欠かせない」

 新型コロナウイルスの感染が拡大している。仮に今どこかの原発で事故が起きたら、避難所で感染が広がる「複合災害」になりかねない。
 だが、原発周辺の自治体が策定する広域避難計画にそういう視点はない。新型コロナに限らず、集団感染の予防策や発生した場合の対処について、前もって検討しておくべきだ。
 東京電力福島第一原発事故は、地震・津波との複合災害だったために対処を難しくした。その教訓があるにもかかわらず、(自治体に避難計画策定を求めた)政府の防災基本計画や原子力規制委員会の原子力災害対策指針は、いかなる複合災害も想定していない。
 原発事故による避難は、自然災害による避難とは異なる。水害などの場合、避難先はせいぜい歩いて行ける範囲だが、原発事故では数十キロ、数百キロの話になる。自動車などの乗り物がなければ避難できない。

環境経済研究所代表・上岡直見さ

 東日本大震災の時は、日本原子力発電東海第二原発の30キロ圏でも、橋の損壊などで多くの国道や県道が通行できなくなった。昨年の台風19号では、水戸市で国道や高速道路のインターチェンジが冠水する被害もあった。車の場合、どこか1カ所でも通れなければ避難ルートとして使えない。
 実際の避難では、原発の30キロ圏から外に出る際は、放射性物質の汚染検査や簡易除染もある。
 車両検査で基準値を超えれば乗員の代表者検査をやる、それで引っ掛かったら全員の検査をする、というように簡略化されたものの、限られた検査場に何万台もの車が押し寄せる。出入りや待機を考えると、移動以外でものすごく時間がかかってしまう。自然災害で避難ルートに支障が出ていればなおさらだ。
 複合災害を想定していない避難計画では、計画通りに滞りなく避難を終えるのは現実的に困難だろう。
 避難時間よりも本質的な問題は、避難の過程で住民がどれだけ被ばくするかだ。原子力災害対策指針は1週間で100ミリシーベルトの被ばくを許容している。一般人の年間被ばく限度の1ミリシーベルトと比べ、とんでもない値だ。避難計画は、原発周辺の住民は緊急時に被ばくしても仕方ないという考え方を前提にしている。そのような前提がそもそも許されるのか。
 避難計画の実効性は、原発再稼働の条件になっていない。住民の安全に責任を持つべき政府も原子力規制委員会も自治体も電力会社も、責任をたらい回しにして、誰も実効性を確認してない。こんな無策のまま再稼働を認めてはならない。(聞き手・宮尾幹成)

<かみおか・なおみ>1953年、東京都中野区出身。早稲田大大学院修了後、エンジニアリング会社で化学プラントの設計、安全性評価を担当した。2000年から環境NGOで活動。東日本大震災以降は災害時の避難問題を研究する。前・交通権学会長、法政大非常勤講師(環境政策)。近日中に「原発避難はできるか」を刊行予定。

東海第二原発とは?

 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給していた。東日本大震災時は外部電源を失い、冷温停止まで3日半かかった。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。
 2018年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。再稼働の対策工事は21年3月までかかる見込みで、資金支援のため、東京電力などが約3500億円を拠出する構図も固まった。再稼働には、東海村や水戸市など6市村の同意が必要で、首長がどう判断するかが焦点になる。

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