<東海第二原発 再考再稼働>奥久慈茶業組合長・藤田宏之さん「予想以上の風評被害続く」

 東京電力福島第一原発事故があった福島県に隣接する大子町で、400年ほどの歴史がある特産茶「奥久慈茶」を生産している。この地域は冬季の冷え込みが厳しいことから、茶葉が厚くて、何回入れてもおいしく飲めるのが特長だ。
 2011年は寒暖差が安定し、数年に1回あるかないかのいい出来だった。収穫を楽しみにしていたが、5月上旬の収穫前の3月に、原発事故があった。
 福島第一から約300キロ離れた神奈川県のお茶から、放射性セシウムが検出されたのを知り、「大子町は約100キロしか離れていない。出荷した後に知らなかったでは済まされない」と検査を受けたところ、セシウムが検出されて、出荷制限となった。30年近くやってきて、初めてだった。
 翌12年4月に制限解除となったが、風評被害は予想以上だった。生産量は半分ほどに落ち込み、売り上げは3、4割減少。出荷の再開後、震災前に注文があった顧客に、はがきを送って安全性を訴えたが、いまだに戻ってくれない。

奥久慈茶業組合長・藤田宏之さん

 日本原子力発電東海第二原発は茶畑からは約50キロで、福島第一の半分の距離。そこで事故が起きたら、福島の事故とは比較にならないほどの被害が出るだろう。生産者としての仕事は諦めざるを得ない。
 原発を動かす一事業者の利益だけ求めて、私たち周辺住民が事故におびえながら生活しなければならないのはなぜか。そう考えたら、再稼働は反対だ。原発の場合、事故が起きてからでは遅い。
 東海第二の30キロ圏に入る自治体では、原発事故時の広域避難計画の策定が求められており、大子町は「避難先」となっている。だが、風向きによっては、私たちも避難を強いられることが考えられるし、茨城に限らず、首都圏全体でパニックになる。
 そもそも、一事業者のために、避難計画を作ること自体がおかしい。避難計画が必要であれば、初めからこんな危険なものは造らなければいい。そこまでして、東海第二を動かす理由はない。
 今、福島第一の放射能汚染水を海に流す話が出ており、福島や茨城の漁業者が反対している。だが、漁業者に限らず、隣接する茨城ということで、私たちにも風評被害が出てくるのではないか。福島第一の事故時と同じようなことが、また起こるのではないかと心配になる。風評というのはそれほど、大きな影響を及ぼす。 (聞き手・松村真一郎)

<ふじた・ひろゆき> 1965年生まれ。奥久慈茶を生産する大子町の「清水園」の3代目。山あいにある1.2ヘクタールの茶畑で、年間約3500キロの茶葉を育てる。2017年4月から、35人が加盟する奥久慈茶業組合の組合長を務めている。

東海第二原発とは?

 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給していた。東日本大震災時は外部電源を失い、冷温停止まで3日半かかった。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。
 2018年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。再稼働の対策工事は21年3月までかかる見込みで、資金支援のため、東京電力などが約3500億円を拠出する構図も固まった。再稼働には、東海村や水戸市など6市村の同意が必要で、首長がどう判断するかが焦点になる。

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