事故9年 残る爪痕 福島第一原発の今

 原子炉建屋周辺に高線量のがれきが散乱し、敷地内では防護服が不可欠だった東京電力福島第一原発。世界最悪レベルの事故から9年、建屋の外は普段着で視察できるまで除染が進んだが、今も手付かずの現場は多い。取材班は1月27日、原発構内に入った。3、4号機周辺を中心に、事故の爪痕をたどる。(福岡範行、写真は山川剛史、空撮は坂本亜由理)

4号機原子炉建屋の海側はコンクリートや鉄骨のがれきがむき出しのまま。津波と水素爆発の威力を物語る

 ゴオンゴオンという低いモーター音と、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌のメロディーが響く。3号機原子炉建屋屋上へと向かう屋外エレベーターに、顔全体を覆う全面マスクと防護服姿で乗った。屋上に立つと、持参の線量計は毎時250マイクロシーベルトに跳ね上がった。国際放射線防護委員会(ICRP)が一般の人の年間の線量限度としている一ミリシーベルトに4時間で達する値だ。
 屋上からは、南側の4号機に目を奪われた。太い配管の上に建屋の壁だったコンクリートのがれきが散らばり、さびた鉄骨が突き出していた。地上から見えない場所。4号機は事故時、定期検査中で原子炉に核燃料がなかったが、2011年3月15日に水素爆発が起きた。前日に爆発した3号機から水素が建屋内に流入したとみられている。4号機プールにあった核燃料は全て共用プールへの搬出を終え、リスクは減った。

3号機タービン建屋屋上に残っていたがれき。粉々になったコンクリートには原子炉建屋の壁と同じ水色の塗装が見える

 3号機建屋屋上は、プールからの核燃料搬出のためドーム形屋根が設置された。内部の空間線量は、立ち入った西端で毎時32マイクロシーベルト。核燃料搬出は作業員の被ばくを抑えるため、遠隔操作で進む。計画では、21年3月に終わる。

3号機タービン建屋屋上は放射線量が高く、人力作業ができない。がれきは吸引機などを使って撤去していた

 海側にある3号機タービン建屋の屋上には、粉々になったがれきが山積みのまま。線量が高く人が立ち入れず、大型吸引機でがれき撤去が続く。大きな穴もあり、雨が建屋内に流入し汚染水を増やしている。

3号機原子炉建屋前に集まる作業員たち。高線量の建屋内では内部被ばくを避けるため、全面マスクと防護服を着用する

 敷地内では、「マンモス」や「ゾウさん」と作業員から呼ばれていた大型のコンクリート圧送車3台を目にした。事故直後に建屋に近づきプールへ放水し、中の核燃料を冷やし続けた車だ。3台は除染後も放射線量が高く、事故時の厳しい状況を物語る。ナンバーは取り外され、敷地外を走ることはできない。1台は緊急時用として現役だが、2台は放射性廃棄物として処分される予定だという。

敷地内に残る世界最大級のコンクリート圧送車。日米の国旗と「TOMODACHI」と書かれた紙が車体に張られていた
福島第一原発1〜4号機(左から)=本社ヘリ「おおづる」から
2020年3月11日こちら原発取材班紙面

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