原発マネー 持ちつ持たれつ 依存の構造(下)-関電役員 金品受領-

 原発が立地する自治体には、国から多額の交付金という見返りがある。福井県高浜町は原発がない同規模の自治体と比べると、役場や体育館といった施設が充実。地元の建設業者なども公共工事で潤ってきた。国、電力会社、自治体の持ちつ持たれつの関係は、原発マネーで維持されている。(高野正憲、栗田啓右、今井智文、鈴木啓太)

東日本大震災後、新規制基準に適合して再稼働した関西電力高浜原発3、4号機=福井県高浜町で(2018年11月撮影)

「普通の町ならできない増額」

 高浜町中心部のJR若狭高浜駅から歩いて約10分の高台に、町の中央体育館がある。2017年3月に建て替えられた。内装にヒノキが使われ、広さは旧体育館の倍に。土日には子どもたちのスポーツ大会が開かれ、父母らの声援が響く。
 建設費は17億6400万円。うち6億円は、国からの「核燃料サイクル交付金」を充てた。関西電力高浜原発でMOX燃料(プルトニウムとウランの混合酸化物)を使うプルサーマル計画を、町が受け入れた見返りとして支給された。
 町は当初、建設費を15億円程度と見込み、冷暖房設備を付けないつもりだった。だが町議会から「近隣市町では冷暖房を整備している」と反発され、町債の発行額を増やした。町の方針転換に反対した元町議釣本音次さん(69)は「原発のない普通の町ならできない増額。原発の潤沢な交付金があるからぜいたくに使ってしまう」と指摘する。

原発関連の交付金を使って建設された高浜町中央体育館=高浜町宮崎で

震災後、増える原発関連の交付金

 原発立地自治体の財政は、電源立地地域対策交付金などの「電源三法交付金」で支えられている。東日本大震災後、原発の長期停止や廃炉が相次ぎ、交付金が減った自治体が多い。同じ福井県の美浜町では関電美浜原発1、2号機が廃炉となり、影響が直撃した。
 だが、高浜町では原発関連の交付金が震災前よりも増えた。高浜原発は全4基が現役。未稼働の1、2号機は、国が運転開始40年超の原発1基当たりの交付金を1億円増やす制度の対象となった。さらに県が11年11月、稼働中の原発の核燃料に課す核燃料税を、停止中も課税できるように変え、配分される交付金が増えてもいる。
 高浜町の原発関連の歳入は全4基が稼働していた04年度に比べると、2基の稼働にとどまる18年度の電源立地地域対策交付金は1.5倍、核燃料税交付金は3.4倍に膨らんだ。
 町に入る原発マネーは公共工事を増やす。中央体育館の擁壁改修や駐車場の整備などには、約3億4000万円の電源立地地域対策交付金が使われた。その工事は、高浜町元助役の森山栄治氏(故人)が顧問だったとされる地元の建設会社「吉田開発」が受注した。
 町の元職員は、増えた交付金を「甘くなった制度で得られたあぶく銭」と指摘し、原発に依存する財政の将来を危ぶむ。「使用済み核燃料の置き場所がなくなれば、原発を動かせなくなる。そうなる前に、真剣に考えなければならない」

高浜町の財政は?

福井県高浜町の2019年度予算の歳入105億円のうち、原発関連は53%を占める。そのうちの4割が原発施設の固定資産税などで、残る6割は電源三法交付金と、県が独自に関西電力から徴収している核燃料税の配分金。電源三法交付金は、電力会社が電気料金に含めて徴収し、販売電力量に応じて国に納める税金を原資としている。

町議経営の会社、原発関連工事を大量受注

 「再稼働してもらわないと町の活性にもなりません」。15年3月20日、非公開であった高浜町議会の全員協議会。的場輝夫議長(当時)が、高浜3、4号機の再稼働について議会の同意を野瀬豊町長に伝えたいと提案すると、議員から賛同意見が相次いだ。
 全町議14人のうち、1人は関電社員。別の4人は経営する会社や働いている会社が、原発の関連工事を受注していた。当時の町議が経営する会社は、東京電力福島第一原発事故後の3年間で、関電や関連会社などの発注工事を少なくとも80件、3億2000万円分を受注していた。
 関電社員で定年後も再雇用された小幡憲仁議員(無所属)は「会社を気にして判断したわけではない。原発は地元の経済や雇用を支える基幹産業。町議として原発が必要だと思ってのものだ」。一方、唯一反対意見を述べた渡辺孝議員(共産)は「原発で商売していて公平中立な判断はできるはずがない」と嘆いた。
 町議会の構図は今も変わっていない。関電役員らの金品受領問題発覚後にあった10月3日の臨時会で、町職員らの関与の有無を町に調べるよう求めた動議が、反対多数で否決された。

2015年3月20日、野瀬豊町長(左)に高浜原発3、4号機の再稼働に同意するとした文書を手渡す的場輝夫議長=高浜町役場で

限られた地元同意、再稼働巡り周辺自治体に危機感

 原発立地自治体は、電力会社にとっては原発再稼働の鍵を握る。福島事故後の新規制基準に適合して再稼働した原発のある福井、愛媛、佐賀、鹿児島の4県では、再稼働を認めるかの同意権を持つ「地元」は県と立地自治体に限られた。
 だが福島事故で被害が広範囲に及んだように、原発の稼働は周辺自治体にとっても一大事。国は、避難計画の策定義務については原発10キロ圏内から30キロ圏内の自治体に広げた。高浜原発の場合、福井、京都、滋賀の3府県12市町が含まれ、人口は3府県で計約17万人。京都府側の人口は約12万人に上る。
 30キロ圏にある京都府宮津市の市議会は15年12月、高浜3、4号機の再稼働に反対する意見書を賛成多数で可決した。議員たちには「事故が起きれば、被害が避けられない地元」という認識があったのだ。
 関電は20年以降、運転開始から40年超の高浜1、2号機の再稼働を目指す。再び注目される地元同意について、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は見直しを訴える。「再稼働の受益者による『地元同意』は、再稼働に向けた『掛け声』ぐらいのものにすぎない。福島事故を直視するなら、周辺自治体も加えた同意の仕組みを作るべきだ」

2019年11月27日こちら原発取材班紙面

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