高浜増設 ずぶずぶの関係に 依存の構造(上)-関電役員 金品受領-

 関西電力役員らが福井県高浜町元助役・森山栄治氏=2019年3月に90歳で死去=から金品を受け取っていた問題は、発覚から2カ月近くとなった。関電と森山氏との関係はどのようにできあがり、背景にあったものは何か。原発立地自治体と金を巡る「依存の構造」を探った。(高野正憲、栗田啓右、今井智文、鈴木啓太)

再稼働を目指して事故対策工事が進む高浜原発1、2号機=福井県高浜町で

人脈を駆使した高浜町元助役の森山氏

 「地元に金を落とせ」。6畳ほどの洋風応接間で関電高浜原発の所長は、机越しに座る小柄な森山氏から、原発内の工事を特定の業者に発注するよう迫られたことがあった。断ろうとすれば、森山氏は机を蹴り上げて、すごみをきかせてきた。「おれの言うことが聞けないのか」
 森山氏は高浜町助役を辞めた後、高浜原発の幹部らを京都市内の自宅に呼び出していた。「『できません』は禁句だった。(一方的に話をされる)2時間ずっと耐えるしかなかった」。先の所長経験者はそう振り返った。
 京都府綾部市職員を経て1969年に高浜町に入庁した森山氏は、人脈を駆使して建設事業を呼び込むなどの手腕を発揮。77~87年にはナンバー2の助役を務めた。退職後、高浜町の建設会社「吉田開発」の顧問をするなどし、原発構内工事の業者の選定などに影響力を及ぼし続けた。

関電幹部の金品受領は30年ほど前から

 関電幹部らが森山氏から金品を受領するようになったのは、少なくとも30年ほど前。あるOBは後ろめたさを感じつつ、拒否して怒らせたくなかったという。別のOBはこう語る。「関電と森山さんは、高浜3、4号の増設を通じて協力関係にあった。それをきっかけに森山さんが関電につけ込み、金品を押しつけ、ずぶずぶと関係が深まった人がいた。やがておびえるようになった。金品をもらったから断れないと」
 関電の岩根茂樹社長は10月2日の記者会見で、金品を返さなかった理由を「脅された」「森山案件は特別でおびえてしまった」と説明し、自分たちが被害者だと言わんばかりだった。
 ただ、地元には別の見方がある。反原発運動を続ける明通寺(小浜市)の住職中嶌哲演さん(77)は指摘した。「関電が高浜原発をつくり、3、4号機増設を強行するその長い長いプロセスを通じて、関電と森山さんとのあしき関係ができあがった。その間、よっぽど関電の方が絶大な便益を得ている。関電が森山さんをしゃぶり尽くしたんだ」

謎だらけの「地元協力金」

 「なんぼ入ったのか、何に使われたのか、いまだにはっきり分からんのです」。高浜町議を11期務める渡辺孝議員(共産)は40年以上前の出来事を、苦々しい思いで振り返った。
 関電が高浜原発に3、4号機の増設を目指していた1978年、高浜町は巨額の金を巡って揺れた。同年4月、町内の五つの漁協に関電からの「地元協力金」が町を通じて支払われていた、と報道されたのだ。
 当時の浜田倫三町長(故人)は報道後の町議会で、総額9億円を関電から受け取ったと明かす。76年は10月に1億円、12月に1億5000万円、77年は6月に6億5000万円を受領。5漁協に計3億3000万円を支払い、残りを地域振興対策費などに計上したという。浜田町長は「国が増設を認めることがはっきりした段階で全てを明らかにするつもりだった」と説明した。
 一部住民は地元協力金が報道で明らかになるまで公表されず、町長名義の預金として処理されていたことを問題視。町の監査委員に監査請求したが「有効適切な運用」と結論付けられ、訴訟も敗れた。この間、町は各戸に広報を配布し「正しく運用致しております」と火消しに躍起となった。
 そして3、4号機の増設は着々と進み、85年に運転開始。地元では、この9億円について「本当は25億円だった」という話が根強く残っているが、真相は分からないままだ。

関電からの協力金について説明した1978年8月の「広報たかはま」。支出先は均等に記されていた

関電から町への寄付金、森山氏が助役時代に36億円

 地元協力金などと呼ばれる電力会社から原発立地自治体への寄付金は、連綿と続いてきた。町の決算書などによると、70年代以降、関電から高浜町への寄付金は少なくとも計約44億円。うち、森山氏が助役だった77~87年は約36億円で8割を占める。
 元町議は「寄付金についても、森山さんが関電との間を取り持っていたことは間違いない」と話す。それを裏付けるような森山氏の発言が、「9億円」が明るみに出た後の78年4月23、24日付の中日新聞に掲載されていた。
 「3、4号機の総工費は3500億円。仮に1%をもらったとしても、いくらになるか。全国的に原発立地が困難な中で、高浜町は進んで建設を認めているのだ」「関電といってもむやみに金を出すはずはない。機会をみては要求してきたのだ」

関西電力役員らの金品受領問題とは?

 関電は2018年9月、原子力部門を中心に役員ら20人が福井県高浜町の元助役森山栄治氏(故人)から、現金やスーツ券、金貨、小判形の金など計約3億2000万円相当の金品を受領したとする社内調査報告をまとめた。19年9月に報道で明らかとなり、10月2日に公表した。問題を受け、八木誠会長ら5人が取締役や執行役員を辞任。岩根茂樹社長は、第三者委員会の報告書がまとまり次第辞任する。
 社内調査では①関電が原発関連工事の情報を森山氏に提供②森山氏が顧問だったとされる高浜町の建設会社「吉田開発」が競争入札を経ない「特命発注」を含む多数の工事を受注-などが判明。ただ吉田開発への工事発注は「プロセスや発注額は適正だった」と認定した。
 しかし、他部門の担当者や調査対象以前に在籍した元幹部らの受領も判明した。再調査する第三者委は、森山氏と深い関係にあった他の複数業者と関電の取引状況も調べる方針。

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