足元でかすむ「再稼働」求める声 世界最大級の柏崎刈羽原発

 東京から215キロ、日本海に面する新潟県中央部の柏崎市には、首都圏に電気を送ってきた東京電力柏崎刈羽原発がある。
 平日午後5時すぎ、市内中心部のJR柏崎駅前の通りはシャッターを下ろした空き店舗が目立ち、歩く人はまばら。500メートルほど先に1階がガラス張りの建物があり、中では中高生が教科書や参考書を広げていた。東電が市民向けに開放する「TEPCO(テプコ)プラザ柏崎Comfy(カムフィー)」。駅周辺には、同じような東電の施設がもう一つあった。
 世界最大級の原発がある市は、東電との結びつきが強い。柏崎刈羽で働く約6000人のうち、半数を超える3150人が市民だ。

市中心部の5階建ての建物1階にある「TEPCOプラザ柏崎Comfy」。2階には東京電力の事務所がある=新潟県柏崎市

福島事故、連絡ミス… 市民「東電に資格ない」

 参院選公示後の初の日曜だった7月7日、市役所にある期日前投票所は昼すぎから夕方まで、人が途切れなかった。20~70代の男女10人に話を聞くと、7人が原発再稼働を進める自民党に所属する候補に投票したという。多くが再稼働を望んでいるだろうと思って取材すると、「賛成」は2人のみ。3人は「反対」と明言した。
 「電気は足りており、原発を再稼働する必然性がないことは、東電内部の人たちも分かっていた」。自民候補に投じた40代の男性は言い切った。3年前まで東電子会社に勤め、柏崎刈羽で働いていたという。
 東電は再稼働で得る利益をてこに、福島第一原発事故の収束作業や賠償費用を捻出する計画を立てた。しかし、男性とその妻は口をそろえる。「東電に原発を運転する資格はない。任せておけないんですよ」
 夫妻の言葉を象徴する出来事が、6月18日夜に起きた。山形県沖を震源とするマグニチュード6.7の地震の際、柏崎刈羽の職員が「原発に異常あり」と市役所にファクスを送ったのだ。桜井雅浩市長が市職員に再確認させ、東電のミスと判明。翌日、柏崎刈羽の設楽親(ちかし)所長が市役所を訪れ、市長に謝罪した。

誤った情報の伝達に抗議し、柏崎刈羽原発の設楽親所長(右)に申し入れ書を手渡す柏崎市の桜井雅浩市長=6月19日、柏崎市役所で

廃炉の経済効果に期待高まるも…

 このミスで東電は、市長の信用を失った。市長から柏崎刈羽6、7号機の再稼働の条件として求められていた1~5号機の廃炉計画を、東電は今月上旬に示すはずだったが、市長が「今回のミスの再発防止策が先だ」と態度を硬化。計画の提示時期は見通せない。
 柏崎刈羽は12年3月以降、全基停止中で再稼働のめどが立たない。だが安倍政権は30年度に電源の20~22%を原発とする方針を、昨年7月のエネルギー基本計画で決めた。西日本で原発5基が再稼働した17年度、電源に占める原発の割合は3%。福島事故後、各地で原発の再稼働は進まず、廃炉が相次ぐ。桜井市長は基本計画の決定直後の会見で、「現実を見ていない」と、東電の事実上のオーナーである政府の姿勢を批判していた。
 原発城下町でありながら、再稼働を求める声が大きくならない一方で、廃炉の経済効果に期待が高まる。自民候補に投じた自営業男性(59)は「廃炉は30年、40年かかる。携わる人がいれば、景気も良くなるのでは」と話す。
 ただ、地域全体が潤うのか、楽観はできない。先の東電子会社で勤めていた男性は注文を付けた。「原子力という巨大なものを廃炉にするかは大きな政治判断でもある。立地自治体だけでなく、多くの政治家に考えてもらわないと」 (松尾博史)

東京電力柏崎刈羽原発とは?

新潟県柏崎市と刈羽村にまたがって立地し、1~7号機の総出力は計821万2000キロワット。東京電力が1985年から97年までに順次運転を始めた。2~4号機は2007年7月の中越沖地震以来、稼働していない。6、7号機は福島第一原発事故後にできた新規制基準に適合済み。新潟県知事は福島事故の独自検証が終わるまでは、再稼働の議論はしないとしている。東電は1基の再稼働で400億~900億円のコスト減を見込む。

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