東海第二「事前了解」協定1年 再稼働 歯止めどこまで

 日本原子力発電(原電)が運営する東海第二原発(写真、茨城県東海村)の再稼働に際し、立地自治体の同村だけでなく、30キロ圏の周辺5市の事前了解を必要とする原子力安全協定が結ばれてから間もなく1年。協定は「事前了解なき再稼働」を止めることができるのか。改めて検証した。 (山下葉月)

「1市村でも反対なら、先に進まない」

 「『1市村でも反対の場合には、その先に進まない』と確認した」。2月28日、原電との会合後、東海村の山田修村長は協定の意義を強調した。村松衛社長はこの会合で、同村と水戸市など周辺5市の首長に再稼働の方針を説明した。
 昨年3月29日に締結した協定は「事前協議により実質的に事前了解を得る仕組み」と規定。事前了解の対象を周辺自治体にも広げた全国初の協定だった。
 とはいえ、この表現では、原電が「事前協議」にさえ応じれば、自治体側の「実質的な事前了解」を得たと読めなくもない。
 原電の和智信隆副社長が昨年11月、報道陣に「協定に拒否権なんていう言葉はどこにもない」と答えると首長が反発。村松社長が謝罪する騒ぎになった。

新協定、原電は「東海特有のもの」

 原電と自治体で協定の解釈にズレがあるのか。
 本紙が那珂市から入手した文書によると、原電と6市村の交渉が始まった2012年2月当初、原電は、事前了解を東海村以外に広げることに「株主から理解を得るのは難しい」と難色を示していた。原電の株式は、東京電力など電力会社計10社が90%を保有。原電は東海第2の協定が他地域に影響を与えることを恐れたのだ。
局面が変わったのは17年3月。村松社長は、6市村の首長を前に「自治体の合意を得られるまでは再稼働できない覚悟」と強調。20年の運転延長の申請期限が迫る中、首長らの理解を得ることが必要と判断したとみられる。
 それでも原電は「他地域には東海特有のものと説明する」と株主の顔色をうかがい続けたが、首長も「実を取る」姿勢を重視。「1市村でも反対すれば再稼働できない」と確認した上で協定書にサインした。
 村松社長もこの間、「1つの自治体でも意見があれば協議を打ち切ることはしない」と繰り返してきた。電力会社への配慮から曖昧な文言になったものの、「再稼働に事前了解は必要」との解釈は原電と6市村間で共有されている。

自治体は「新協定、法的拘束力がある」

 6市村の間では「協定は単なる紳士協定ではない」との声もある。山田村長らは、法的拘束力のある公害防止協定と同じ位置付けとの共通認識で交渉したという。福岡県福津市(当時は福間町)と産廃業者の公害防止協定を巡る訴訟で、09年7月、最高裁は判決の中で法的拘束力を認めた。
 東海第2原発の差し止め訴訟代理人の丸山幸司弁護士は「協定はある種の契約。契約違反を許さない6市村の側の毅然(きぜん)とした対応が、法的拘束力を強固なものにする」と話している。

東海第二原発とは?

日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給してきた。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は東京電力福島第1原発からの半分程度の約120キロ。重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。原子力規制委員会は2018年11月、最長20年の運転延長を認めた。

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