福島第一原発事故から8年 被災者への賠償の今

 東京電力福島第ー原発事故で避難を強いられ、家や仕事など生活の基盤を失った被災者への損害賠償は、今も続いている。東電は被害者に寄り添うとし、自ら「三つの誓い」を掲げた。にもかかわらず 、「誓い」からかけ離れた対応が目立っている。事故から8年、原発事故の損害賠償の仕組みと現状をまとめた。(小川慎一)

 被災者が東電に賠償請求する方法は三つある。一つは東電への直接請求。束電が国の「中間指針」に沿って、賠償額を決めるが、指針を絶対視して支払いを拒む例がある。このため、裁判外紛争解決手続き(ADR) が利用されている。国の原子力損害賠償紛争解決センターが仲介役となり、申し立てから和解案提示は10カ月程度。被災者の事情に応じて中間指針から賠償金を増額させた和解案を、東電が受け入れれば、計1年程度で賠償金が支払われる。

中間指針とは?

文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が2011 年8月に示した賠償基準。13年12月までに「追補」が4回加わったが、賠償額の見直しはされていない。政府の避難指示に基づき避難を強いられた人の精神的賠償は月10万円で、避難区域外からの避難者への精神的賠償は大人8万円、子どもと妊婦が最大48万円。

賠償支払い 8.7兆円超に

 東電によると、2019年2月末までの賠償支払いは約269万件、総額8兆7301億円。避難を余儀なくされた個人への支払いは1兆9804億円。営業や操業ができなくなったり、風評被害を受けたりしている法人や個人事業主への支払いは2兆9067億円。土地建物の損害など個人と法人に共通する支払いは1兆8113億円。除染などの費用は2兆315億円となっている。
 賠償には、国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構に国債を交付し、現金化して東電に支払った資金が使われている。税金を機構を迂回して利用する仕組みで、無利子の貸し付けとなっている。

ADR 東電の和解案拒否相次ぐ

 ADRでは、原子力損害賠償紛争解決センターが被災者と東電に和解案を示す。双方が受け入れれば、東電から賠償金が支払われる。しかし、18年以降、東電が集団申し立ての和解案を拒否し、手続きが打ち切りとなる例が目立つ。18年末までにADR手続きが終わった2万3217件のうち、東電の和解案拒否で打ち切りとなったのは121件に上る。

集団訴訟 全国で約30件

 原発事故を巡っては、被災者が集団で東電や国に損害賠償を求めた訴訟を起こしている。集団訴訟は全国で約30件あり、うち10件で判決が出ている。確定判決はまだない。
 多くの訴訟で、東電と国の津波対策を巡る責任や、中間指針による賠償金が妥当かどうかが争われている。10件の判決は全てが原発事故に対する東電の責任を認めている。
 国を被告に含めた裁判では、6地裁が国の責任を認めた。千葉地裁の2件の判決は、いすれも国の責任を否定した。
 また、複数の判決が中間指針を超えた賠償額を認めている。

賠償基準 見直し進まず

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