新電力、苦肉の大手頼み 設備や安値競争で不利

 新電力の中では3番目に古く、バイオマス発電を主力とする老舗イーレックス(東京)が3月18日、東京電力と手を組み、新会社を設立すると発表した。両社の狙いは、「再生可能エネルギー事業の推進」。だが、なぜイーレックスは単独で取り組まず、東電と組まざるを得なかったのか。背景には新電力を取り巻く極めて不利な状況がある。 (伊藤弘喜)

新会社「エバーグリーン・マーケティング」の設立を発表するイーレックスの本名均社長(左)と東京電力エナジーパートナーの大亀薫副社長(右)。中央は新会社の田中稔道社長=東京都中央区で

格差

 「競争環境は厳しさを増している」。新電力を含めた電力会社間の経営状況についてイーレックスから新会社「エバーグリーン・マーケティング」の社長に就く田中稔道(としみち)氏は東京都内で開いた記者会見で繰り返し強調した。
 イーレックスは1999年に設立。再生エネの中でも、ヤシの実の殻を燃料に使ったバイオマス発電に力を入れており、高知県と大分県で計2設備が運転中、他に岩手県など4設備が建設・計画中だ。
 販売電力量は新電力の中では10位前後。だが大手電力9社の中で最少の四国電力と比べても、10分の1だ。大手と大きく水をあけられている新電力は、ここに限った話ではない。新電力最大手のF-Power(エフパワー)でさえ、四国電の4割にとどまる。そのエフパワーは2018年6月期に純損益で120億円の赤字を出した。

思惑

 何が新電力を苦しめているのか。最大の要因は、商品となる電力を安定的に大量に生む原発や水力発電所といった大規模設備を持っていないことだ。東電など大手電力はかつて、コストに一定の利益を上乗せして電気料金を決める「総括原価方式」の下、原発などを建て、送電線を使ってきた。「電気料金で開発した設備を独占的に使っていいものか」という議論は長らくあるが、大手に全面的に手放す気はない。
 16年4月からの小売り全面自由化で電力各社間の安値競争は激化する一方だ。安さとは違う魅力を打ち出したいイーレックスの本名均(ほんなひとし)社長は、再生エネで全電力を賄うことを目指す国際的な企業連合「RE100」を挙げ、「積極的に貢献していく」と宣言。新会社で東電が持つ水力発電施設も活用し、再生エネの「環境への優しい」側面を前面にアピールする狙いだ。
 一方の東電側は、福島第一原発事故の当事者として「ブランドイメージは最悪」(新電力関係者)。再生エネに熱心なイーレックスと組むことで、イメージ改善も図れる。

接近

 苦境に立たされる中、イーレックス以外でも新電力が大手に接近して活路を見いだす事例が出ている。昨年9月には太陽光発電事業に取り組む新電力大手のLooop(ループ、東京)は中部電力との資本業務提携を発表。中部電はループの第三者割当増資を引き受け、出資比率は10.25%となった。
 だが、90年代から続く電力自由化の狙いは、新電力の新規参入を促し、料金を下げるとともに、多様なサービスを後押しすることだったはず。政策提言を続ける自然エネルギー財団(東京)の石田雅也さんは「大手への集中が強まれば、自由化が後退しかねない。新電力にも送電線をより使いやすくするなど、公平な競争環境の整備が欠かせない」と話す。

東電とイーレックスが新会社設立

 東京電力エナジーパートナーと新電力のイーレックスは3月18日、省エネルギー技術の導入や再生可能エネルギー由来の電力使用に積極的な企業向けに電力を販売する新会社を共同設立すると発表した。
 会社名は「エバーグリーン・マーケティング」でイーレックスが66%、東電が34%を出資する。四月から営業を始め、イーレックスの代理店販売網や、東電の省エネに関する知見を生かし、顧客増につなげていく。
 将来的にはイーレックスのバイオマス火力発電所や調達した太陽光発電の電力を法人向けに販売する。

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