<原発のない国へ すぐそばの未来4>環境配慮 投資の条件に

 「投資家の関心が変わってきた」。2014年に創立し、東京都墨田区に本社を構える風車開発ベンチャー「チャレナジー」の営業担当役員、水本穣戸(しげと)さん(31)が感慨深そうに語る。
 風速が毎秒40メートルの強風の中でも発電できる小型風車を開発。20年には量産化し、台風の多い九州やフィリピンなどで販売する。社員14人の平均年齢は30代前半。小さな新興企業に今、巨額の資金を運用する機関投資家らが熱い視線を送る。

台風の中でも発電できる小型風車の実験機を囲むチャレナジーの社員ら=東京都墨田区で

増える「環境」への投資

 その一つが、生命保険大手の第一生命保険。2月、チャレナジー社に2億円の投資を決めた。第一生命は13年度以降、太陽光や風力など再生可能エネルギーへの投資に力を入れ、これまでの累計投資額は1000億円に上る。運用調査室長の竹内直人さん(43)は「さらに担当者を増やし、再生エネのベンチャー発掘を強化する」と意気込む。
 一方で昨年4月、温室効果ガスを大量に排出する石炭関連事業には投資しない方針を決めた。こうした流れは第一生命に限らない。
 業績だけでなく、環境対策や社会貢献などの観点で企業や事業を評価する投資が、国際的に注目されている。国連が呼び掛けた「ESG投資」で、16年時点の投資総額は約2500兆円(22.9兆ドル)と、12年時点から急増した。
 この動きを下支えしているのが、環境規制と消費者の意識だ。二酸化炭素(CO2)排出への規制が強まる中、石炭火力発電や油田といった投資先は、将来お金を生まない「負の資産」になりかねない。また「地球に優しい」ということが特別な価値を持つようになり、環境対策に配慮した製品の需要が高まっている。
 金融機関も石炭関係の資産を持つ企業から資金を引き上げ、再生エネ関連に振り向ける動きが世界的に広がっている。

変わる企業の価値観

 オフィス機器メーカーのリコー(東京)は、国際的な競争を勝ち抜くためにはESG投資を無視できない現実に直面した。欧州の大口顧客と数十億円の商談の際、相手が契約書に「ESGの視点でリコーの工場を監査する」という一文を盛り込んだのだ。
 この監査で温暖化対策が甘いとみなされれば、取引に影響が出かねない。欧州の別の大口顧客からは、CO2排出の進捗(しんちょく)状況を毎月報告するようにも求められた。社会環境室長の阿部哲嗣さん(49)は「ESGに対応しないとリスクになる。きちんと対応すれば、他社と差をつけるチャンスにもなる」と強調する。
 リコーは、事業に必要な電力を再生エネで100%調達することを目指す国際的な企業連合「RE100」に日本企業として初めて参加した。仕入れ先の中小企業にも同様の取り組みを呼び掛け、目標実現を目指す。
 ファッションビルを手掛ける丸井グループも昨年、RE100に参加した。担当の塩田裕子さん(45)がその意義を語る。「これからはESGを大切にする企業が優秀な学生や若い顧客、投資家を引き付けることができる」 (伊藤弘喜)

ESGとは?

Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字。気候変動対策や地域社会への貢献、女性の働きやすさなど持続可能性や倫理的な要素を重視する価値観。国連は2006年、こうした要素を組み込む投資を求める「責任投資原則(PRI)」を提唱。欧米の大手機関投資家が自主的に署名し、広がってきた。

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