<原発のない国へ すぐそばの未来3>電気の「産地」堂々PR 再生エネに証明書

 電気には火力や原子力といった電源の種類ごとに色が付いているわけではない。発電所から直接電気を引き込まない限り、どこでつくられたか分からない。
 だが、温室効果ガス削減が国際的な約束とされ、企業などから太陽光など再生可能エネルギーでつくった電気だけを使いたいという要望が高まっている。そこで国は、電気の「産地」を証明する制度を始めた。

非化石証書の取引結果が表示されたパソコンの画面=東京都港区の日本卸電力取引所で

18年5月に始まった非化石証書取引

 東京・JR田町駅近くの雑居ビルにある「日本卸電力取引所」で3月1日、再生エネの電気の「産地証明」が初めて取引された。
 新電力「みんな電力」(東京)は、取引に参加した40社のうちの一つ。福島県南相馬市の太陽光発電所がつくった8万6000キロワット時相当を約12万円で買った。この発電所の電気はファッションセレクトショップ「ビームス」の都内店舗で使われる契約。産地証明を得れば、「南相馬の再生エネの電気を使っています」と堂々とPRできる。
 産地証明は「非化石証書」を買うと付いてくる情報だ。温暖化の要因となる二酸化炭素(C02)を排出しない再生エネの電気は、環境に優しい。国は2018年5月から、この「優しさ」の価値を示す証書を発行し、電気とは別に売り買いできるようにした。
 現状で取引できるのは、国が再生エネの普及を目指して導入した固定価格買い取り(FIT)制度を利用した電気の証書に限っている。対象は年間約700億キロワット時相当と膨大だが、これまでに実施した4回の取引量は計3700万キロワット時相当とまだまだ少ない。

証書の売り上げで国民負担減に

 産地を示せるようになり、証書取引の活発化が見込める。大手化学メーカー花王(東京)は産地証明が始まる前に、愛媛県内の紙おむつ工場のC02排出削減に証書を利用した。担当者は「将来的には愛媛の再生エネがほしい。操業地域に貢献でき、利用価値が高い」と話す。証書で産地をはっきりさせれば、米アップルなどが参加する、再生エネで全電力を賄うことを目指す国際的な企業連合「RE100」の実績証明に使えるようにもなった。
 証書の売れ行きが伸びると、国民の負担が下がるメリットがある。東日本大震災後の再生エネ普及を支えたFITは、電気料金に上乗せして国民から徴収した分を買い取り資金にしている。その総額は、30年度までに3兆円超に上る。経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「証書の利益で資金が増えれば、上乗せ分が減る」と期待する。

「原発と区別を」と識者

 ただ、お墨付きには限界がある。証書が電気の流れとは別に取引されているため、再生エネの「産地」と直接契約しない限り、石炭火力の電気を使っても、証書さえあれば「再生エネを使った」とみなせてしまう。20年5月からは、C02を排出しないという理由で、原発でつくった電気も非化石証書で扱われる。
 政策提言を続ける自然エネルギー財団(東京)の石田雅也さん(60)は「CO2排出量を減らすのが再生エネ導入の目的。証書は、環境負荷が少ない発電方法と一緒に用いた方がいい。原発分は名称を『原子力証書』にして、再生エネとはっきり区別するべきだ」とくぎを刺した。 (松尾博史)

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