<原発のない国へ すぐそばの未来1>停電に3日耐えられる街、宮城・東松島市

 太平洋の海岸線から北に3キロ、宮城県東松島市を横断するJR仙石線の線路沿いに、平屋や二階建ての住宅85戸が並ぶ。この住宅街を含む赤井地区に落雷があったのは、2017年7月25の午前1時すぎのことだった。
 停電し、地区は1時間半にわたり真っ暗に。だが、この街の電気は消えず、約200人の住民は誰も停電に気付かなかった。地元自治会副会長の相沢正勝さん(68)は「2、3日後になって、初めて知ったよ」。
 8年前、相沢さんは大津波で壊滅的被害を受けた海沿いの大曲地区に住んでいた。自宅は流され、5人の家族や親戚を失った。停電が長引き、避難先の姉の家では、庭で火をおこして米を炊き、ドラム缶を風呂にした。記憶は鮮明に残っている。「あんな災害は二度と起こってほしくない。でも、ここでは万が一の電気の心配だけはないんだ」

電気の地産地消に取り組んでいる復興住宅街「東松島スマート防災エコタウン」。太陽光パネルが並ぶ=3月9日午前6時18分、沢田将人撮影

再生エネを防災に生かす

 この住宅街は災害などで外部からの電力供給が途絶えても、3日間は自前で電気を賄える。東松島市が震災後、住宅メーカーの積水ハウスと共に水田に開発した復興住宅で「スマート防災エコタウン」と呼ばれる。日本初の取り組みだ。
 街の真ん中には、太陽光発電の黒いパネル。夏なら昼間の電力需要を100%満たせる。足りない分は、電力事業を担う「東松島みらいとし機構」が東北電力の送電網を通じて市内の別の太陽光発電所から買ったり、太陽光で充電した大型蓄電池を活用したりして補う。機構の常務理事、渥美裕介さん(34)は「街の全需要の半分近くを、地元の再生可能エネルギーで満たしている」と説明した。

電気の地産地消、全国40カ所以上で

 非常時は蓄電池だけでなく、ディーゼル発電機が自動で動く。渥美さんは「2年前の停電の時、発電機が動きだして黒煙を上げたので、火事と勘違いした人もいました」と明かした。
 街の中の電線は自営で、東北電の送電網から独立。住宅だけでなく、近くにある仙石病院など四つの医療機関と県の運転免許センターにつながり、普段から電気を供給している。
 これらの施設は災害時には避難所となる。停電が4日以上となれば、街の非常用電源から最優先で電気の供給を続ける。仙石病院では8年前、長期化した停電で腎不全患者の人工透析が続けられなくなったが、これで助かる命が増えた。
 街の整備には約5億円の税金が投じられた。4分の3は環境省の補助金が充てられ、残りを市が負担。みらいとし機構は街の外の公共施設や漁協、農協に電気を売って利益を得ており、市が負担した1億2500円を15年ほどで回収できる見込みだという。
 再生エネの電気を地産地消しながら防災に生かす試みは、東京都武蔵野市など全国40カ所以上で進む。震災の苦い経験が、その挑戦を後押ししている。(宮尾幹成)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から8年。原発のない国をどう実現するか。先進的な取り組みを計5回紹介し、未来を展望します。

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