事故避難住民の相談員 原発関連財団が研修を受注 電力・メーカーから役員

 国が東京電力福島第一原発事故で避難している住民をサポートするために配置する「相談員」制度で、相談員の研修や助言業務を、電力会社や原発メーカーの幹部らが役員を務める公益財団法人「原子力安全研究協会」(東京)に発注したことが分かった。原発推進色の強い団体から、原子力の安全性を強調するなど偏った情報が発信される恐れがあり、避難住民の不信を招きそうだ。 (大野孝志)

帰還判断ゆがめる恐れ

 事故の影響は長く続き、住民の間では帰還や移住を決断する人、当面は避難生活を続ける人と対応が分かれている。
 国は全員の帰還を目指す方針を改め、各地に相談員を配置し、線量計の使い方や、低線量被ばくによる健康への影響、被ばくの低減策などについてアドバイスし、住民に今後の対応を決める材料を提供する。だが、早期帰還を強いられるのではという懸念は根強い。
 相談員には、地元の医師や保健師、自治体職員OBらが想定されるが、相談内容は広く、専門的な知識も要求される。こうした人材は多くないため、国は相談員を支援することを決め拠点を福島県内に設ける。
 環境省は三月、支援業務を請け負う団体を決める入札を価格評価と技術力評価を組み合わせた総合評価方式で実施。二者による入札の結果、原子力安全研究協会が七千四百万円で落札した。
 協会は放射線防護をはじめ、原子力の安全性を中心に研究している。ただし、運営方針を決める評議員や理事には、日本原子力研究開発機構の理事長、中部電力や電源開発(Jパワー)の副社長、三菱重工業常務らの名が並ぶ。法人登記で歴代幹部を調べても、国の原子力政策と深く関わってきた人たちがほとんど。
 こうした団体が相談員制度を後押しすることについて、福島県内の女性保健師は「偏った人たちのサポートを受ければ、住民からの信頼を失う」と話した。避難中の住民からは「放射線のことは、電力会社とは無関係なところで勉強してきた人から教えてもらいたい」との声が聞かれた。
 発注した環境省の担当者は「応札者の提案内容や金額で公正に判断している。どんな人が相談員になるか未定だが、総合的に対応できる拠点にするため、外部に運営を委託した」と話した。協会は「取材対応する人材がいない。業務が立て込んでいる」と取材に応じなかった。
(メモ)相談員制度
 原子力規制委員会の有識者会議が昨秋、避難した人たちの帰還に向けた対策の一環として、個々人で線量計を持って被ばく線量を把握し、身近な相談員のアドバイスを受けながら、帰還か避難継続、移住を判断することを提言した。空間線量から被ばく線量を推計する従来の方式では、実際の被ばく線量とかけ離れるケースが出ることが背景にあり、国は提言に沿って相談員の制度化を進めている。

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