相談員確保難しく 原発関連財団が支援受託 住民の健康左右

 東京電力福島第一原発事故で避難中の人も、帰還した人も、心配は尽きない。住民にアドバイスする相談員は非常に重要だが、人材確保は難しく、国の準備は遅れている。安易に進めれば、住民に帰還を強いるだけの存在になってしまう。 (大野孝志)
 福島県いわき市内の仮設住宅で先月中旬、幼児を抱える母親が対象の健康相談会が開かれた。会場を訪ねると、相談を受ける側の信頼がいかに重要かを痛感させられた。
 「目の前にある食べ物を食べても大丈夫?」「除染すれば、生活できるの?」「ほかの家の子たちも戻るかどうか。学校が成り立たなくては困る」
 母親たちは多様な不安をぶつけてくる。二時間に及ぶ会を終え、相談を受け付けた保健師の女性は「相談員の言葉一つで、住民の帰還の判断や健康が左右される。後になって『だって安全と言ったじゃないか』と批判されかねない。相談員は体の負担より、精神的重圧の方が大きいだろう」と明かした。
 だれが相談員を務めるのか。自治体が国の交付金を受けて相談員を雇うことは決まっているが、具体的にはまだ決まっていない。内閣府は、一部地域で避難指示が解除された田村市や、放射線量が比較的低い広野町、楢葉(ならは)町、川内村と協議しているが、自治体担当者からは「国が何をしたいのかよく分からない。人材確保に苦労しそうだ」との声が聞かれる。
 肝心の人材が決まらない中で、「相談員のための相談員」を原発推進色の強い団体が務めることだけは先行して決まっている。
 内閣府の担当者は、住民の帰還を促すための取り組みではないと強調し、「試行錯誤しながら、息の長い取り組みにしたい」と語るが、国に対する住民の不信感は根強い。信頼を得るには前途多難だ。

健康相談会で母親㊨の相談に応じる栄養士ら。母親たちは多様な不安を抱えていた=福島県いわき市で

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