「密閉」優先があだ 誤ベント防止の安全装置 5電力でも同構造 

 東京電力福島第一原発事故で、2、3号機への注水など対応の遅れを引き起こしていたのがベント(排気)配管に設置された一枚のステンレスの板だ。安全のための装置だが、頑丈すぎる設定で、逆の結末に。調べてみると、沸騰水型軽水炉(BWR)を使う東北電力、北陸電力、中部電力、中国電力、日本原子力発電の原発にも同じような装置が設置されていた。
 ラプチャーディスク(破裂板)と呼ばれるステンレス板は一九九二年、原子力安全委員会が過酷事故対策を検討し、設置されることになった。誤ってベント弁が開いても、一定の圧力がかからないと、ディスクが破れず、配管にふたがされた状態を保つ。格納容器内の気体を外部に出さない安全装置だ。
 しかし、今回の事故では逆に作用した。
 福島第一3号機を例に取ると、高圧で原子炉に注水する非常用冷却装置が機能を失い、昨年三月十三日午前四時すぎ、核燃料が水から頭を出し始めた。
 現場に残された手段は、低圧のディーゼル駆動ポンプや消防車。これらを使い、早期に注水が再開できていれば、炉心溶融という重大事故は防げた可能性は十分ある。
 ただし、ポンプの注水能力は六気圧程度しかないため、現場は炉内の蒸気を格納容器に逃がし、六気圧より下げて一刻も早く注水をしたかった。
 問題は格納容器に出た蒸気をベントで排出すること。ディスクは五・三気圧の力がかからないと破れないのに対し、午前五時すぎの格納容器の圧力は三気圧強。ディスクを強制的に破ったり、迂回(うかい)したりする手段はなく、ベントできない状態だった。
 このため、炉心溶融が始まっているのを知りながら、同九時すぎまで格納容器の圧力が高まるのを待つしかなかった。
 ベントの配管を備えた沸騰水型の原発について、ラプチャーディスクの設定圧の状況を表にまとめた。
 出力や格納容器の大きさには差があり、単純には比較できないものの、ディスクが破れるには四・一~五・五気圧の力が必要な設定になっていた。
 福島第一3号機で何とか注水を復活したかった時の格納容器内の圧力が三気圧強だったことを考えれば、ディスクがこんな設定でいいのか疑問も残る。
 海外の沸騰水型の原発では、もっと設定圧が低かったり、非常時にはディスクを通らない別のルートを用意したりする事例もある。
 ある電力会社の幹部は「放射性物質を少しでも外に漏らしたら大問題になる。閉じ込めることしか考えなかったかもしれない」と振り返った。(榊原智康、永井理)

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