<原発のない国へ>原子カムラの抗い(中) 国際連携で小型炉開発

「小型モジュール炉(SMR)は、原子力業界の常識を変える」
 アルゼンチン・エネルギー省のガダノ原子力担当次官が、本紙の取材に熱弁を振るった。SMRは小型原発の一種で、出力は従来の軽水炉の3分の1ほど。電力需要の小さな地域に向いている。主要部分を工場で造って現場で組み立てるので、建設費を抑えられる。
 アルゼンチンは、新興国などに原発の新たな需要を起こそうと、世界初の実用化を目指す。建設中の原型炉を2021~22年に稼働させるのが目標で、米国、ロシア、中国、韓国などとしのぎを削る。

アルゼンチンが2021~22年に稼働を目指す小型原発の建設現場=ブエノスアイレス州北部リマで(アルゼンチン・エネルギー省提供)

 ガダノ次官は11月中旬、日米とカナダが主導する「クリーンエネルギーの未来のための原子力革新(略称NICE Future)」の会議で来日した。は「地球温暖化阻止に原発が役立つ」という機運を盛り上げるだけでなく、技術連携もテーマ。ガダノ次官は「規格や規制ルールを世界で統一すれば、さらにコストが安くなる」とNICEに期待を寄せた。

アルゼンチン・エネルギー省のガダノ原子力担当次官=東京都港区で

 日本の経済産業省は、出力調整もしやすいSMRの特徴に着目。出力が不安定な再生可能エネルギーの補完を期待し、開発を進めると表明した。北海道や四国での再生エネの増加を念頭に、地方への導入を探る。
 2月、世耕弘成経産相が主催のエネルギー戦略を議論する有識者会合で、原発ベンチャー米ニュースケール社のレイエス最高技術責任者が、原発メーカーや経済界代表らに売り込んだ。
 「SMRは日本の製造業にぴったりはまる。ぜひ皆さんと協力したい」
 業界には温度差がある。経済協力開発機構(OECD)原子力機関のパイラール技術開発副部長は「一種の流行。ベンチャー企業はやる気満々だが、大手メーカーや電力会社は、そうでもない」と冷ややかだ。
 SMR研究を手掛ける日本の原発メーカー担当者は「小型なら出力も小さくなり、1キロワット時当たりの電力単価はむしろ高くなる。建設費を抑えることで、どこまで電気を安くできるか」と慎重だ。別のメーカーは「大量受注しないと、採算が合わない」と指摘した。
 投資の流れは、再生エネに傾いている。国際エネルギー機関によると、17年の再生エネへの世界の投資額は33兆円。原子力は2兆円にとどまった。
 経産省資源エネルギー庁の武田伸二郎・原子力国際協力推進室長は、NICEの国際会議で強調した。
 「技術の『死の谷』をいかに乗り越えるか。経産省として支援する」
 新技術の研究成果が商業化に結び付かず、埋もれることを意味する「死の谷」。その谷を越えるため、有望な計画を予算投入で支えるというのだ。経産省はSMRを含む原子炉技術の高度化への補助金として、19年度予算の概算要求に10億円を盛り込み、さらに拡大させる構えだ。
 NPO法人・原子力資料情報室の松久保肇事務局長が言う。「廃炉や核のごみの処理策もみえない中、日本が注力すべきは原発の後始末の研究だ。新型炉を支援する意味は、ない」 (伊藤弘喜、吉田通夫)

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