<原発のない国へ 原子カムラの抗い(上)> 生き残りへ作戦会議

 さながら、原発の生き残りを懸けた「作戦会議」のようだった。大規模な国際会議なのに、非公開。開催の記者発表もない。
 英文の会議名を訳せば「原子力がエネルギー転換期において直面する課題と機会」。22カ国から130人のエネルギー官庁の高官や研究者、原発メーカー幹部らが11月13、14日、東京・霞が関の経済産業省に集まった。
 「作戦」は、複数の参加者への取材で漏れ聞こえてきた。原発で、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの不安定な出力を補完し、温室効果ガスの排出削減に取り組む「パリ協定」を満たそうというのだ。

NICE Future創設が協議されたとみられる2017年9月のウィーンでの松山政司内閣府特命担当相と、ペリー米エネルギー省長官の会談資料。開示請求したが、日本側参加者名以外は黒塗りだった

 「再生エネだけでは、パリ協定の目標達成は不可能だ」。世界原子力協会のキリル・コマロフ会長のプレゼンテーションに、大きな拍手が湧いた。
 経産省資源エネルギー庁の武田伸二郎・原子力国際協力推進室長は温暖化対策として、小型原発の開発方針を表明した。「2040年ごろに新しい原発が稼働するには、将来の建設のためのデザインを今、始めないといけない」と述べた。
 「原発の価値をどうすればPRできるか」をテーマにした討論では、英国のNPO代表が「再生エネとの組み合わせへの賛成は7割を超える」と報告した。
 会議を開いたのは、米政府などが主導する「クリーンエネルギーの未来のための原子力革新(略称NICE Future)」という連合体。その狙いを会議前の10月、来日した米エネルギー省のダバー科学担当次官が語った。
 「原子力がクリーンエネルギーに含まれるようにすることだ」
原発は発電で温室効果ガスを出さないが、「核のごみ」を出し、事故を起こせば深刻な被害を及ぼす。とてもクリーンとは言えず、10年から続くクリーンエネルギー大臣会合で前面に出ることはなかった。
 米トランプ政権になるとエネルギー省のペリー長官が、昨年6月の中国での大臣会合でNICEを提案し、今年5月にデンマーク会合で正式に発足させた。

今年5月、デンマーク・コペンハーゲンでの第9回クリーンエネルギー大臣会合で発言する大串正樹経産政務官(当時)=経済産業省提供

 「米国の本音は、原発業界の維持だ」
 長崎大核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長は言う。米国では安価な再生エネの台頭で原発業界が競争力を失い、政府に助けを求めた。この夏、米政権が強制的に、原発の電気を送電会社に買わせるという救済策が報じられた。
 NICEは、原発再稼働の姿勢を続ける安倍政権にとっても「渡りに船」。日本は、米国、カナダとともに事務局となった。
 関連の動きは、日本国内ではほとんど未公表だ。経産省のホームページでは、大串正樹経産政務官(当時)が、NICE発足につながった大臣会合に出席したと伝えながら、NICEには触れていない。
 本紙はNICEに関連した文書の開示を経産省に求めた。出てきたのは、内閣府首脳とペリー長官の会談内容のメモだけで、それ以外は不開示。しかも、メモは「外交上の秘密」を理由に、真っ黒に塗られた「のり弁」だった。 (伊藤弘喜)

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