東海第二30キロ圏 住民96万人 弱者避難の計画難航

 東海第二原発(茨城県東海村)の30キロ圏内の14自治体は、約96万人の住民を対象にした避難計画作りに苦労している。特に高齢者や病人、障害者ら体の不自由な人の避難をどうするのか。冬場は大雪に見舞われる福島・会津地方に車での避難を想定する自治体もあり、課題は山積みだ。(鈴木学、酒井健)

東海第二原発の30キロ圏自治体にある高齢者施設。避難には支援が必要になる

 2011年3月の東京電力福島第一原発事故では、多くの高齢の入院患者らが避難途中に亡くなった。移動手段の確保が難しかっただけではなく、受け入れ先のめどがないまま、無理に移動した結果だった。
 この反省から、県は自由に動けない高齢者や障害者が一時的に屋内退避できる施設の整備を急ぐ。県が把握している10キロ圏内だけで、主な病院や社会福祉施設は計35カ所。そのうち国の補助金を受けて、本年度までに25カ所(整備中を含む)で放射性物質が入り込むのを防ぐシェルター化を進める。
 改修が終わった東海村の特別養護老人ホーム(入所者90人)の男性理事長は「原発事故の際は、現実的には屋内退避になると思う」と話す。水や食料の備蓄は1週間分あるという。
 ただ、事故の規模が大きければ、避難を余儀なくされるケースもある。5キロ圏内だけで、避難の際に車いすやストレッチャーなどの支援が必要な人は、県の推計で1500人に上る。車両は約1000台必要となるが、確保のめどは立っていない。
 県が想定する避難先は30キロ圏外の施設。だが、老人ホームの理事長は「逃げるのには時間がかかる。入所者は移動に長い時間かかると、健康上のリスクが高まる」と懸念する。

豪雪地域への移動に不安 常陸太田

 30キロ圏内の常陸太田市では、約51000のうち約1万人が、原則マイカーで福島県の会津地方に避難する計画。避難先のうち、福島県下郷町、会津坂下町、湯川村などの5町村は全国屈指の豪雪地域だ。

避難で使う道路は、除雪車がたびたび行き交う=福島県会津若松市

 普段雪が少ない地域の住民が、雪の中を車で避難することは現実的なのか。記者は2月13日、最も遠い約170キロ離れた湯川村への避難ルートを車で走ってみた。山間部に差しかかると、道の両側に高さ2メートル前後の雪の斜面が迫り、除雪された路面にも白く雪が張り付く。冬用タイヤでもハンドルをとられ、夜になれば危険性が高まる。
 常陸太田市防災対策課の担当者は「感触として、冬用タイヤを持つ市民は半数もいない。原発事故に備え『冬用タイヤを買ってほしい』と市民に求めることはできない」と頭を抱える。
 湯川村に避難することになる地区の元町内会長の中村正人さん(68)は「どこか違う避難先はないのかと言いたくなる」。同地区の主婦(59)は「1台が事故を起こせば大渋滞になって、大勢が雪の中に閉じ込められる」と不安を口にした。
 30キロ圏人口が全国最多で、幹線道路に車が集中すれば、福島での事故時より激しい渋滞が予想される。また、地震や津波で避難先も被災すれば、住民の逃げ場がなくなる。県は第二の避難先の確保も検討しているが、手が回っていない。

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