6市町村事前同意 生みの親 村上前東海村長「首長の力量問われる」

 東海第二原発(茨城県東海村)が新規制基準に「適合」となり、原子力規制委員会が課す再稼働に必要な三つの審査のうち、一つをクリアした。残りを通過しても、最大のハードルが待ち構える。東海村や水戸市など30キロ圏の6市村が再稼働に同意するかどうかだ。自治体による枠組みの「生みの親」である東海村の前村長、村上達也さん(75)は「首長の力量が問われる」と話す。(鈴木学、越田普之)

原発再稼働を懸念する東海村の前村長・村上達也さん=茨城県東海村で

30キロ圏に96万人…恐ろしい

 「6市村がそれぞれ、住民の意向をくみ取ることが大事になってくる、首長が協定をどう使うかだ」。村上さんは再稼働の鍵を握るのは、自治体トップだと強調する。
 6市村は3月、原電と「再稼働の際、事前協議により実質的に6市村の事前了解を得る仕組みとする」とした規定を盛り込んだ新協定を締結。全国で初めて、30キロ圏の1自治体でも「ノー」と言えば、再稼働できないようにした。
 6年前、協定締結に向け、6市村と日本原子力発電の交渉のテーブルをつくったのが、当時村長だった村上さんだ。2011年3月の東京電力福島第一原発事故で放射能汚染が広範囲に及んだのを見て、「立地自治体だけが、(再稼働の)同意の権限を独り占めするのは正義ではない」と異を唱えた。
 12年、水戸市など30キロ圏の5市長に声を掛け、原子力所在地域首長懇談会をつくり、議論を開始。後任の山田修村長に思いが引き継がれ、協定が実現した。「6市村長が粘り強く頑張った。山田村長が筋を通してくれた」と評価する。
 自治体の権限は拡大したが、原発を動かそうとする原電や、それを追認する規制委の姿勢を、村上さんは憂う。「福島の問題は今も解決されていないし、チェルノブイリは30年たってもだ。東海第二は30キロ圏に100万人近く住んでいるのに、廃炉を決断できないのは恐ろしい話だ」
 廃炉になれば、自治体が苦労している住民の避難計画も必要なくなる。約96万人の避難は一筋縄ではいかない。「半分の50万人でも、実効性のあるものはできない」と心配する。
 村長を13年まで4期16年間務め、1999年の核燃料加工施設ジェー・シー・オー(JCO)の臨界事故では避難の指揮を執った。東日本大震災では、東海第二が危機的状況に陥るのを目の当たりにもした。
 「世界が自然エネルギーへ転換を進める中、『原子力発電の時代は終わった』というリーダーがいないんだな、この国には」
 嘆くだけではない。原発と生きてきた村で、かじ取り役を務めた村上さんは警鐘を鳴らす。「チェルノブイリや米スリーマイル島のような原発事故は日本では起きないと言ってきたが、いかにでたらめだったか。自国の科学技術を過信しすぎている」

「原電 廃炉専念を」と識者

 原発専業という特殊な会社の日本原子力発電(原電)にとって、東海第二原発の再稼働は経営破綻を回避する頼みの綱。原電は世界最悪レベルの事故を起こした東京電力の支援なしには資金調達さえできない。識者からは、全国で相次ぐ原発の廃炉作業に専念するべきだとの声が上がる。
 「原子力のパイオニア」と言われた原電は、1957年に創立。出資は、東京電力や関西電力など電力会社で9割を占める。日本で初めて商用原発の東海原発(廃炉中)を建設・運転し、火力や水力など他の発電手段を持っていない。
 原電は原発4基を持ってきたが、2基は老朽化で廃炉。残る東海第二と敦賀2号機(福井県)は震災後、長期の停止が続く。発電はゼロでも、売電先として契約する電力五社から毎年受け取る計一千億円の「基本料金」が経営を支える。
 しかし、電力という商品がなければ、経営は上向かない。敦賀2号機は建屋直下に活断層が存在する疑いがあり、再稼働は難しい情勢。敦賀3、4号機の新設も計画段階にとどまり、見通しは立っていない。
 こうした状況で、運転期限を間近に控える東海第二は命綱。運転延長を目指し、再稼働に必要な工事費を賄うため、筆頭株主の東電に資金支援も求めた。運転延長が原子力規制委員会に認められたとしても、工事期間の都合上、原発の実働は17年程度に限られる。その間に重大事故が起きれば、都心に最も近い原発ゆえに、福島第一原発事故よりも損害が大きくなる危険性があり、原電に賠償できる体力はない。
 原発問題に詳しい立教大大学院の金子勝特任教授(経済学)は「原電は廃炉の専業会社へ転換するべきだ」と指摘する。原電は廃炉ビジネスに乗り出しているものの、すぐに収益の柱に育たないとの認識で発電にこだわる。(越田普之)

他の被災原発 危険性判断に時間 新基準適合は8原発15基に

 原子力規制委員会が原発の新規制基準に適合と判断したのは、東海第二(茨城県)を含めて8原発15基となった。西日本が中心で、東日本では東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)に続き2原発3基目。
 規制委は8原発11基を審査中。太平洋沿いの原発は、地震と津波の危険性を判断するのに時間がかかっている。東日本大震災で被災した東北電力の女川2号機(宮城県)と東通1号機(青森県)は適合の見通しは立っていない。東通は敷地内にある断層が、地震を引き起こす「活断層」という問題も抱えている。
 柏崎刈羽は、新潟県の花角英世知事が原発の安全性検証の優先を明言。検証は2、3年かかり、再稼働に必要な地元自治体の同意を得られる環境にはない。
 運転期間40年超の関西電力高浜1、2号機、美浜3号機(いずれも福井県)は20年の運転延長が認められたが、対策工事に時間がかかる。(内田淳二)

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