地元「総意」 7年放置 福島第二原発、廃炉へ/東電「汚染水」交渉に備え、関係悪化回避

 東京電力が14日、福島第二原発の廃炉方針を表明した。地元の廃炉要請に応えぬまま再稼働を模索し続けた東電。福島第一原発事故から7年3カ月でようやく断念した。福島第一の汚染水問題解決へ、地元とのこれ以上の関係悪化を避けたい意図がうかがえる。(宮尾幹成、内田淳二)

請願採択

 「事故で多くの町民の人生が変わってしまった。廃炉にするなら、もっと早く決断してほしかった」
 東電の小早川智明社長の廃炉方針表明を聞き、福島県内の避難先から楢葉町に戻った古書店経営、岡田悠(ゆたか)さん(39)は複雑な胸の内をのぞかせた。
 震災後、第二原発の廃炉は、福島県全体が「総意」として望んできた。原発事故後の2011年10月、県議会は福島第一を含む全10基の廃炉を求める請願を採択。原発を推進してきた自民党会派も賛成に回った。翌月には佐藤雄平知事(当時)が国と東電に廃炉を求めると表明。後任の内堀雅雄氏も方針を受け継いだ。
 しかし、東電は第二原発の廃炉について「広く社会の意見と国のエネルギー政策の動向などを総合的に勘案し判断したい」と、明言を避け続け、発電機能の復旧を着々と進めていた。

高齢化

 「あいまいな状態を続けていること自体が、復興の妨げ、足かせになる」。小早川社長はこの日、内堀知事との面談後、決断の理由を報道陣に語った。第二原発を巡り、地元では「いつか再稼働する」とうわさされてきただけに、住民の懸念が一つ消えた。
 福島県では、45000人が避難先で生活を続ける。原発事故に伴う避難指示が出た地域のうち、第一原発が立地する双葉、大熊両町を除く9市町村の大半で指示は解除されたが、浪江町と富岡町は実際の居住者が1割にも満たない。
 避難指示解除の地域で出会うのは高齢者ばかり。事故前に27.3%だった9市町村の高齢化率は40%を超え、全国平均を大きく上回る。若い世代は、「店がなく生活が不便」「放射線が心配」と帰還をあきらめた人が多い。自治体の存続自体が危ぶまれる事態だ。

難交渉

 廃炉要請に向き合ってこなかった東電の態度が一転した背景には、昨年6月に代わった新経営陣が、地元軽視の発言をするなど失点続きで追い詰められていた現状がある。
 福島第一では、汚染水を保管するタンクの用地確保が限界。除染しきれない放射性物質「トリチウム」を含む水がたまり続け、どう処理するかが課題となっている。国や東電は、水で薄め、海へ放出する方法を中心に検討しているが、地元漁業関係者は「風評被害につながる」と猛反発し、解決の糸口は見えない。
 県内全原発の廃炉が公約の内堀知事は、10月の知事選での再選を目指し、近く出馬表明する見通し。今後予想される汚染水問題での難しい交渉に備え、東電にとっては知事との関係維持が最重要課題と言える。
 もっとも、原発事故の被災者が慰謝料増額を求めた裁判外紛争解決手続き(ADR)の和解協議で東電側の拒否が続き、住民感情は悪化している。廃炉を「当然」と受け止める住民は多く、東電への信頼が上向く状況にはない。

エネ計画 実現性乏しく 東電以外の契約者に負担も

 東京電力が福島第二原発の廃炉の検討を表明したことは、原発の維持推進を前提にする政府のエネルギー基本計画が実現性に乏しいことを改めて浮き彫りにした。原発の再稼働や新増設は立地住民の反対が根強い。今後も既存原発の廃炉が相次げば、2030年度に必要な電力の20~22%を原発でまかなう政府目標は絵に描いた餅となる。
 世耕弘成経済産業相は14日、記者団に「(基本計画の目標は)どの原発を動かすかをベースにしていない」と述べ、福島第二の廃炉は目標達成に影響しないとの見方を示した。しかし、実現には30基程度の再稼働が必要で、福島第二の廃炉が決まれば国内の原発は38基に減る。30年度までに稼働から40年の「寿命」を迎える原発も多い。
 地元自治体や住民に再稼働の理解を得るのは容易ではない。与党の支持で当選した新潟県の花角英世知事でさえ、現状では柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な姿勢を示している。龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「原発再稼働を前提にしたエネルギー基本計画の現実性がますます薄れることになる」と指摘している。
 また、廃炉費用の負担が東電以外の契約者に広がる可能性もある。
 東電は福島第二の4基の廃炉に必要な費用を2766億円と見積もっており、このうち17年度末時点で1975億円を引き当てているが、791億円足りていない。しかも単純な試算による見積もりのため、実際の費用は増える恐れもある。
 現在、引当金は東電の電気料金に上乗せされている。経産省は廃炉を決断しやすくするという名目で制度を変え、20年度以降は原発を持たない新電力の契約者にも負担させられるようにした。このため、幅広い電力利用者が、原発の廃炉費用を求められる可能性がある。 (伊藤弘喜、吉田通夫)

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