新潟知事選24日告示 再稼働 揺れる住民 柏崎・刈羽ルポ

 東京電力が再稼働を目指す柏崎刈羽原発が立地する新潟県で、知事選の告示が24日に迫る。前知事は福島第一原発事故の検証を優先し、再稼働に慎重だったが、新知事はどう判断するのか。改めて再稼働の是非が問われる中、原発城下町の柏崎市と刈羽村では「原発への意思表示ができる」「それより目の前の生活」と、住民の思いが揺れている。(内田淳二)

規制委による説明会で質問に立つ高橋優一さん。土曜午後の開催だったが、空席が目立った=新潟県柏崎市で

「原発、孫に残さない」

 「豆腐のように軟らかな地盤に立っている。なぜ合格なのか」「住民の安全は考えないのか」。雨で冷え込んだ19日、柏崎市の市民ホールに集まった住民から怒声が飛んだ。
 柏崎刈羽6、7号機が新規制基準に適合した理由の説明会。原子力規制委員会の審査担当職員が「審査の厳しさは世界最高水準」と淡々と回答を続け、質問しようと挙手していた人が2人ほど残っていたが、2時間の予定をわずかに過ぎただけで打ち切られた。
 「国は信用できない。だから県の検証に期待してきた。次の知事も原発への姿勢で選ぶ」。会場を出た元設計士の高橋優一さん(67)は言い切った。自宅は原発から九・二キロ。母親(89)は一人では歩けない。「事故があってもすぐには逃げられない。危険なものを孫の代まで残したくない」
 土曜昼すぎに市中心部で開かれた会に、参加したのは160人ほど。1000席用意された会場の2割にも満たない。住宅内装業の田中有人(ゆうと)さん(36)は、仕事に出掛けていた一人。再稼働には賛成で、不安なのはむしろ会社の先行き。
 市の人口は2005年には約9万4000人だったが、今は約8万4000人。仕事も同僚も年々減ってきた田中さんは「県はもっと移住者や観光客の呼び込みに力を入れてほしい」と訴えた。

人けのない柏崎駅前通りは、シャッターを閉めたままの店が多い。8月には大型スーパーも閉店する

「まず目の前の生活」

 米山隆一前知事の女性問題による辞職で降って湧いた知事選は、野党各党が推す県議の池田千賀子さん(57)と自民、公明が支援する元副知事の花角(はなずみ)英世さん(59)が激突する構図。原発再稼働を巡っては、池田さんは米山路線を継承し、「県民投票」の実施も視野に入れている。一方、花角さんも前知事が主張した検証を引き継ぐ考えで、際立った違いは見えない。
 刈羽村で住民に話を聞くと、「原発の賛否の話がタブー。働いてるのが多いから余計なことは言わん」。原発のそばに住む男性(70)は、原発関連企業の雇用と国の補助金で潤ってきた村の事情を説明したが、思いは複雑だ。「福島の事故を見たら、もう金の問題じゃねえけどな」
 停止中の原発では、今も数千人が働いている。再稼働に向けた事故対策工事が続いているからだ。「津波で浸水しないように頑丈な扉にしたり、電気配線にシリコーン流し込んだり。再稼働したらメンテだけになるから仕事はむしろなくなる」。一九七八年に着工した1号機の建設から関わってきたという60代の男性作業員が内情を明かした。
 福島県出身という男性に、福島第一原発の事故について聞くと、「もう戻れない人がたくさんいんだよなあ」と遠い目をした。しかし、すぐに思いを振り切るように続けた。「先のことより今のこと。選挙は誰が出るのかも知らねえ」

東京電力柏崎刈羽原発とは?

 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがって立地する。全7基で、総出力約821万キロワットは世界最大規模。福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉。東電は6、7号機の再稼働を経営再建の柱と位置付けている。両基は2017年12月、原子力規制委員会の審査で新規制基準に適合と判断された。避難計画の策定が義務付けられている原発30キロ圏内の9市町村には45万人が暮らす。

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