2030年エネ計画 国民意見反映せず

 経済産業省が16日に公表したエネルギー基本計画案は、国民の間で根強い原発再稼働への反対意見を反映せず、原発推進を鮮明にした。一方、太陽光発電など再生可能エネルギーを「主力電源化」するとうたいながら、約2割程度とした前回の数値目標を変えておらず、与党内からも異論が出ている。 (伊藤弘喜)

新たなエネルギー基本計画案について辰巳菊子委員(左から3人目)らが出席して開かれた有識者会議

推進

 「国民目線の意見が足りない」。16日に開かれたエネルギー基本計画の見直しを議論する経産省の審議会で、消費者団体の辰巳菊子氏は訴えた。経産省が選んだ審議会のメンバーは東京電力に融資するメガバンクや原発メーカーの役員など、原発産業の利害関係者が多い。
 東京理科大の橘川武郎(きっかわたけお)教授も2030年度の電源構成比率について「この3、4年の変化が反映されていない。原発(の比率)が高すぎ、再生エネが低すぎる」と、このまま決定することに不満を表明。しかし、座長の坂根正弘コマツ相談役は原発推進の従来路線を維持することで押し切った。
 経産省が1月に設置した「エネルギー政策に関する意見箱」には4月中旬までに300件超の国民の意見が寄せられた。このうち3分の2は原発推進に反対を唱えていることが本紙の集計で判明。だが、計画案に反映された形跡は見当たらない。
 さらに計画案は近年の原発の建設費の高騰にも目をつぶった。原発メーカーの三菱重工業や日立製作所が海外で計画中の原発事業では1基当たりの建設費が、15年時点の政府試算より倍増していることが明らかになっている。

矛盾

 11年3月の東電福島第一原発事故後の原発の再稼働が進んでいないことから、発電量に占める原発の比率は1・7%(16年度実績)にとどまる。計画案では「原発依存度を可能な限り低減する」と記載している。
 にもかかわらず、計画案は30年度の比率目標を20~22%に拡大することを明記。「実現を目指し、必要な対応を着実に進める」と強調した。辰巳氏は「むしろ(原発の)拡大政策になっている」と矛盾を指摘した。
 一方、再生エネについては「長期を展望した環境負荷の低減を見据えつつ活用していく重要な低炭素の国産エネルギー源」として「主力化」すると打ち出しながら、再生エネは不安定さを補うために「火力に依存しており、脱炭素化電源ではない」などと欠点を強調する表現も目立つ、極めて分かりにくいものとなっている。原発が立地する福井県の西川一誠(いっせい)知事は「一体どういう脈絡があるのか」と困惑を隠さなかった。

異論

 自民党内からも再生エネの目標を上方修正しないことに異論が噴出している。河野太郎外相は1月の国際会議で、現行目標について「世界平均は現在24%。目指す数値が今の世界平均ということは外相として悲しい」と指摘。安倍晋三総裁の特別補佐を兼ねる柴山昌彦筆頭副幹事長は、2月の衆院予算委員会で政府目標が低すぎると指摘し大幅修正を要請した。党の再生可能エネルギー普及拡大委員会(委員長・片山さつき参院議員)がまとめた提言案も「今の目標は世界をリードする比率とはいえない」と苦言を呈した。
 だが、世耕弘成経産相は「何か大きな技術的な変化があったとは思わない。大枠を変える段階にはない」と修正に難色を示す。背景には、将来に向けて原発の比率を引き下げたくないという狙いが透けて見える。
 再生エネの価格が世界的に急低下する潮流に背を向け、コストが高くゴミの処分場もない原発への依存を続ければ、そのツケは電気代の高止まりや税金投入で国民にはね返ることになる。

エネルギー基本計画とは?

 法律で政府に策定が義務付けられた国の中長期的なエネルギー政策の指針。おおむね3年ごとに見直す。重点分野や新技術の研究開発方向を示し、電力会社や石油会社などエネルギー企業の設備投資計画を左右する。電気代の変化や発電所の開発による地域への影響など国民生活にも大きな影響を与える。

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