原発、コスト増でも推進 1基4400億円試算 実情1兆円超/エネ計画素案

 経済産業省が16日に公表した2030年に向けた新しいエネルギー基本計画の素案で、将来の電源構成を決める際に大前提となる各電源のコスト推計に、近年の原発建設費の高騰を反映させていないことが分かった。建設費は政府が4年前に前回計画を策定した際に前提とした「1基4400億円」から、原発メーカーや商社によると倍の1兆円以上になっている。だが、経産省は「最も安い電源」とした前回推計は堅持。電源構成に占める原発の割合を現状の2%弱から30年度に20~22%に拡大する方針をそのまま踏襲する。 (伊藤弘喜)

 専門家からは「原発がコスト競争力を失っている状況を反映しないのはおかしい」(自然エネルギー財団大野輝之常務理事)との批判が出ている。
 素案が前提にしているのは政府が15年にまとめた試算。1基当たりの建設費を4400億円と推定。原発の発電コストを「1キロワット時当たり10.1円以上」と推計し、このうち3.1円が建設費に相当する計算で、石炭火力(12.3円)や水力(11円)より安い電源と位置付けた。
 しかし、その後、三菱重工がトルコで進める計画や東芝が米国で着手した事業(現在は米企業が継承)では建設費が1基あたり1兆円を超えている。東京電力福島第一原発事故後、安全規制が強化されたためだ。単純計算で発電コストに占める割合は6.2円以上になり、原発の発電コストは13.2円以上に上がる。石炭火力や水力を上回り最も安い電力ではなくなる。
 龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)によると前回の政府試算以降に明らかになった福島事故処理費の膨張を勘案した事故リスク対応費の増加分なども算入すれば、原発発電コストは「17.6円以上」に上がり、太陽光電力の入札価格の17.2円(17年度、大規模設備対象)も上回る。
 これらの状況にもかかわらず、経産省は素案では原発について「低廉で変動がない重要な基幹電源」の位置づけを変えていない。
 原発は現在5基が再稼働しているが20~22%の達成には30基程度の稼働が必要になり、老朽原発が多いことを考えれば新設も必要になる可能性がある。
 素案は原発堅持の一方、太陽光など再生可能エネルギーの比率目標は従来通り22~24%に据え置いた。
 経産省はホームページで国民からの意見を募集する「意見箱」やパブリックコメント(意見公募)を経て、7月上旬に閣議決定する方針だ。

4年の変化反映せず

 経済産業省のエネルギー基本計画の素案は、2014年以来4年ぶりの見直しをうたいながら、この間の情勢変化に正面から向き合ったとは言えない内容となっている。
 東京電力福島第一原発事故以降、再稼働した原発は8基で、16年度の電力量に占める原発の割合は1・7%。30年度の目標の20~22%を実現するには、稼働から40年たった古い原発を10数基、運転延長したり、原発を新設したりすることが必要となる。どちらも実現性に乏しい。
 福島の事故以降、原発の安全対策規制が強化され建設費用は増加。工期の遅れも常態化している。米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリックは、米国で原発新設の工期遅れを繰り返し17年3月に破綻。三菱重工業などがトルコで進める原発計画は、総事業費が当初想定の2倍の4兆円以上に膨らむとみられ、伊藤忠商事が3月に撤退した。日立製作所が進める英国の原発新設も総事業費が3兆円規模に膨らむことから、支援を巡る英政府との協議が難航している。
 一方、再生可能エネルギーはコスト低下と導入拡大が進む。17年の太陽光発電の平均入札価格は10年の3分の1以下の11円に低下。15年には累積設備容量で風力発電が原発を超え、17年には太陽光発電も原発を追い抜いた。
 この4年の変化を踏まえれば原発の目標を下げ、再生エネの目標を引き上げるのが自然だ。だが、両方とも変えずに据え置くという経産省の姿勢からは、原発の存続を目指す意図が透けてみえる。 (伊藤弘喜)

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