やはり起きたボルト締め型タンクの漏出事故 福島第一で同時多発の汚染水問題

 東京電力福島第一原発の地上タンクからの高濃度汚染水漏れ問題は、三百トンと一般的なプール一杯分に匹敵する大量の漏出事故となった。ただでさえ、海側の地下トンネルにたまった汚染水が海に漏れ出していることが大問題となる最中の出来事だった。同時多発的に汚染水が危機をもたらしており、厳しい状況に直面している。(清水祐樹、片山夏子)

タンクの止水材 耐用年数は5年 今後もリスク

 今回の汚染水漏れが重大なのは、問題の起きたタンクが、汚染水貯蔵の主力のタンクであることだ。
 原子炉建屋などにたまった高濃度汚染水を処理しても、原子炉の冷却に再利用できるのは半分程度。残った処理水は、地上のタンクにため続けるしかないが、既にその総量は約三十三万トンに達する。そのうち、七割近い二十二万トン以上がボルト締めタイプのタンクに入れられている。その数は約三百五十基にのぼる。
 このタイプのタンクは鋼材の間に樹脂製のパッキンを挟み、ボルトで締め付けて円筒形にする構造。一千トン級の大容量でも一週間ほどでできる一方、パッキンの耐用年数は五年ほどしかない。既に設置からほぼ二年。三年後には続々と大改修が必要となるものの、汚染水を抜かずに修理は難しい。今回のような問題は今後も起き続ける可能性がある。
 タンク内の水は、除染装置で放射性セシウムを除去し、濃度は一万分の一以下にまで下がっているとはいえ、元が超高濃度なため、とても安全なレベルとはいえない。さらに、骨などにたまりやすいストロンチウムなどはそのまま残っており、処理後の水とはいえ、高濃度汚染水であることに変わりはない。
 日々増え続ける汚染水を、今後もタンクにため続けるしか現状では手段がない。ボルト締めタイプではこれまでも継ぎ目から四回の水漏れが発生。ようやく東電も、耐久性の高い溶接型タンクの導入を始めたが、大きな鋼板を現場で溶接するのは非常に難しい。完成まで数カ月かかり、なかなか増えないのが現状だ。
 「ボルト締めのタンクの使用をすぐにやめることはできない」。二十日の記者会見で、東電の尾野昌之(おのまさゆき)原子力・立地本部長代理は厳しい現状をこう説明した。

もう一つの懸念 高濃度汚染水がたまる海側の地下トンネル

 タンクの問題が急浮上し、注目はタンクが立ち並ぶ原発敷地の山側に集まるが、忘れてならないのは、海側のトレンチ(地下トンネル)にたまった汚染水が押し寄せる地下水と混ざり、海へ流れ出ている問題だ。
 東電は、海への漏出を止めようと、護岸近くに薬剤(水ガラス)を注入して地中壁を設置したが、今度は地下水位が急上昇。かえって漏出の危険性が増したため、井戸を掘って地下水をくみ上げ、タービン建屋に入れ、さらに汚染水を増やす堂々巡りの展開になっている。
 トレンチ内の汚染水も徐々にくみ上げていく計画だが、全体で約二万トンもあるとみられる。ただでさえタンク増設は自転車操業の状態。果たして処理水とは別にタンクを用意できるのか、めどは立っていない。
 次々と降りかかる難題に、東電が対応できない状況に、ようやく国も対応に乗り出したが、抜本的な解決策は打ち出せていない。
 汚染水問題が解決しないと、原子炉建屋内の作業はまともにできず、国と東電がつくった廃炉に向けた工程表も絵に描いた餅になってしまう。厳しい現実を前にゴールはかすんでいる。

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