4野党共同 廃炉へ ゼロ法案提出

 安倍政権は各地の原発再稼働を推進し、原発輸出も後押しする。ただ、多くの野党が「原発ゼロ」で連携、脱原発を求める草の根の市民の声を反映した「萌芽(ほうが)」も見え始めている。 (山口哲人)

再生エネ増でも政府は動かず

 政府は再生可能エネルギーの増大にもかかわらず、原発推進の姿勢を変えていない。経済産業省は4月末、2030年に向けたエネルギー戦略「エネルギー基本計画」の骨子案で、原発を「重要な基幹電源」と位置付け、総発電量に占める原発比率をこれまでの方針通り20~22%に設定した。
 国会の現状は、衆参両院で過半数を占める自民党が原発推進の立場。党内では河野太郎外相が反原発の急先鋒(きゅうせんぽう)として活動してきたが、閣内に入ってからは発信を抑えている。連立を組む公明党は「原発ゼロを目指す」とするが、時期を明示していない。
 これに対し野党第一党の立憲民主党は3月、共産、自由、社民各党と共同で、早期の脱原発に向けた「原発ゼロ基本法案」を国会提出。法施行後5年以内に全ての原発の廃炉を決定する道筋を描いている。
 同法案は作成過程で骨子を公開し、市民の声を反映。小泉純一郎元首相が顧問を務め、独自の原発ゼロ法案を発表した「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」とも調整を重ねて完成させた。
 与党が国会で多数を握る現状では、審議される見通しはない。しかし、昨年の衆院選前、野党第一党だった民進党(現国民民主党)は電力労組系議員の反発で原発ゼロ法案をまとめきれなかったことを考えれば、世論の後押しを受けて法案を提出できたことは大きな前進といえる。

コストでも転換現実味 原発>再生エネ

 小泉元首相が強調するように、原発を巡る費用は増え続けている。一方で再生可能エネルギーのコストは世界的に低下しており、経済合理性の面からも「原発ゼロ政策」の現実味が増している。
 政府が2015年に行った試算によると、新設した原発の発電コストは一キロワット時当たり「10.1円以上」と推計。石炭(12.3円)も下回る「最も安い電源」と主張する。
 だが、東京電力福島第一原発事故以降、規制が強化され、安全対策費用は増大している。「核のごみ」の最終処分費用も政府は3.7兆円としているが、候補地すら見つかっておらず、処理費がどのぐらい膨らむか見当もつかない状況だ。
 安倍政権が後押しする三菱重工業によるトルコ向け原発輸出では当初、4基2兆円と予想したのが倍の4兆円強に膨れ上がり、計画が揺らぐ。日立の英国向け輸出も負担を巡る英政府との交渉が難航中だ。
 一連の状況変化を踏まえ、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は4月に原発のコストについて独自に試算した。建設費や事故リスク対応費が政府試算の2~3倍に増えた結果「17.6円以上」に膨らんだ。
 その一方で、再生エネは、発電設備の大量生産が進み、価格が急低下する。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調べでは太陽光電力の平均入札価格は10年に一キロワット時当たり38円だったのが、17年には3分の1以下の11円に低下。19年には3円まで下がる。「原発は民間企業が進めるにはリスクが高すぎる」(IRENA幹部)との評価が固まりつつあり、安価な再生エネ主体のエネルギー政策に転換する国が相次いでいる。
 しかし、日本では電力会社が再稼働のメドが立たない原発にまで送配電網を割り当てている結果、再生エネは十分に拡大せず、太陽光の固定買い取り価格(大規模設備)も17・2円と国際水準を大きく上回る。
 大島氏は「原発より再生エネのコストが安くなるのは世界的な流れ。コスト面でも原発ゼロは妥当な政策になっており、政策の抜本転換が急務だ」と指摘している。 (伊藤弘喜)

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