2050年提言に原発堅持方針 再生エネ数値示さず 経産省有識者会議

 長期的なエネルギー戦略を話し合う経済産業省の有識者会議は十日、二〇五〇年に向けた提言を取りまとめた。五〇年までに二酸化炭素(CO2)を大幅に減らす「脱炭素化」を打ち出した。そのための手段としては、再生可能エネルギーを「主力電源」と位置付ける一方で、原発も脱炭素化の技術として堅持し技術開発を継続的に推進する方針を示した。再生エネ導入についての数値目標も示さず、どの技術にどれだけ重きを置いていくかは、はっきり示さなかった。 
 国際枠組み「パリ協定」が今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げたことを受け、昨年八月から有識者らが議論を重ねてきた。夏に決める三〇年度に向けたエネルギー基本計画に反映させる。
 提言は再生エネについて「価格が海外では大きく低下している。脱炭素化が経済成長を損なうことなく実現できると期待も生じている」とした。
 しかし、「太陽光や風力といった再生エネ単独では脱炭素化を実現できない」として五〇年時点でも再生エネだけで脱炭素化することは困難との予測を示した。
 その上で、原発についてはCO2削減の一つの手段として堅持する方針を明記。「安全性向上による事故リスクの抑制、廃炉や廃棄物処理などへの取り組みで社会的信頼を回復することが不可欠」と課題を掲げた上で、「人材や技術、産業基盤の強化に直ちに着手し、優れた原子炉の追及、放射性廃棄物処理に向けた技術開発を進めなければならない」としてさらなるてこ入れの必要性を強調した。
 「可能な限り低減が必要」としてきた従来の政府方針は変えていない。 (伊藤弘喜)

「主力」再生エネ 水差す声 欠点強調、原発必要論に固執

 経済産業省の有識者会議が十日まとめた二〇五〇年に向けたエネルギー戦略の提言は、表面上は再生可能エネルギーを「主力電源」に位置付けているが、数値目標は示していない。その一方で、原発については「脱炭素化のための選択肢」であることを明示し、原発を将来的にも堅持するお墨付きを与えている。日本のエネルギー政策が「再生エネ拡大・原発縮小」という世界的な潮流から逆行する懸念は拭えていない。 (伊藤弘喜)
 提言は、再生エネの位置付けを従来の「有望かつ重要」から「主力電源化を目指す」に格上げした。「基幹電源」や「重要電源」としていた原発からは「重要」「基幹」といった文言が外れた。経済界の反発が根強くある「脱炭素化」も明示した。
 「経産省が『再生エネ主力化』や『脱炭素化』を言うようになったのは前進だ」。エネルギー戦略研究所の山家公雄所長は一定の評価をする。
 しかし、提言全体を通して繰り返されるのは、再生エネ推進論に対するけん制だ。「期待は高いが、世界で繰り広げられる挑戦は再生エネだけではない」「世界の投資額と設備量では火力・原子力をしのぐが、発電量では主力ではない」など水を差すような注釈が目立つ。
 温暖化対策の重要性を言いながら、再生エネには欠点もあることを強調し、「やはり原発も重要」という理屈につなげる思惑が透けて見える。
 エネルギー基本計画の見直しを議論する審議会の委員を務める東京理科大大学院の橘川武郎教授(エネルギー産業論)は「五〇年でも原発が重要だと言うことで、三〇年度の目標比率を変えないための口実をつくりたかったのでは」とも指摘する。
 ここ数年太陽光発電の世界的な価格が低下し、福島第一原発事故を受けた規制強化で原発建設・維持コストが上昇している。それにもかかわらず経産省は四年前のエネルギー基本計画で決めた三〇年度の発電に占める再生エネ比率22~24%、原発比率20~22%の目標を次期計画でも変えず原発再稼働を急ぐ方針。そのための理屈として長期的な観点からみても原発は重要と強調する戦略だ。
 「経済性などに優れた原子炉や廃棄物処理に向けた技術開発が重要」との表現には、とん挫したもんじゅの後継機の開発や核燃料リサイクル技術などばく大な費用がかかる技術開発の継続を正当化しようとの思惑ものぞく。
 福島原発事故を経験しながら日本の再生エネの取り組みは遅く、現時点の導入レベルも長期的な目標も主要国で最低水準だ。原発を重視する余り、再生エネ拡大の目標をはっきり打ち出さなければ投資を呼び込めず、「主力化」はただの掛け声に終わりかねない。脱炭素化からも遠ざかることになる。

<エネルギー基本計画> 国の中長期的なエネルギー政策の指針で、政府に策定が義務付けられている。2003年10月に最初の計画がつくられ、おおむね3年ごとに見直して閣議決定する。電力やガスなどエネルギー企業の投資計画にも影響を与える。現計画では「原発依存度を可能な限り低減する」と明記しながらも30年度時点で発電電源に占める割合を現在の1・8%(16年時点)から2030年度時点で20~22%に引き上げる方針。再生エネは22~24%にする計画だ。経済産業省は今夏に次期計画をまとめる。

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