溶接していない急造タンク群 3年後破綻 耐久性より増設優先

 東京電力福島第一原発で、高濃度汚染水を処理した後の水をためるタンクが、増設のスピードを優先して溶接しなかったため耐久性が劣り、三年後には続々と大改修を迫られることが分かった。敷地内にタンクを増設する用地がなくなる時期とも重なる。処理水には除去が極めて難しい放射性物質も含まれ、このままでは、またも汚染水の海洋放出という事態を招きかねない。(小野沢健太)

 処理水タンクは、帯状の鋼材をボルトでつなぎ合わせて円筒形にし、内側に止水材を施し、鋼材のつなぎ目はゴム製のパッキンを挟んで締め付ける構造。一千トン級の大容量タンクだが、一週間ほどで組み立てられる。溶接をして頑丈に造るより短期間で済むため、急増する汚染水処理をしのぐためには好都合だった。
 しかし、東電が「仮設タンク」と呼んでいたことが示す通り、長期の使用を想定していなかった。当初は二〇一一年度中におおむね汚染水処理は終わる予定だったが、現実にはタービン建屋地下に、今も一日四百トンの地下水が入り込み、原子炉から漏れ出す高濃度汚染水と混ざり、水量がどんどん増えている。
 処理した汚染水の一部は原子炉を冷やす水として再利用するが、使い切れない水は、次々とタンクを造ってためるしかない。処理水はセシウムこそ大幅に除去されているが、他の放射性物質が残る汚染水。漏れがないか、作業員が定期的にタンク群を見回ってボルトを締め直すが、無用の被ばくを招いているとも言える。
 タンクのパッキンなどの耐用年数は五年ほどで、一六年春ごろから改修が必要。そのころには、現時点で計画中のタンク用地も使い果たしている見通しで、新たな用地確保とタンク増設、改修を同時並行で進めなければいけなくなる。
 東電によると、すでにタンクは千基近くあり、このうち約二百七十基の改修が必要となる。
 準備中の新たな除染装置が稼働すれば、約六十種類の放射性物質は除去されるが、トリチウムは残り、海への放出はできない。東電は一昨年四月、意図的に汚染水を海へ放出し、国際的な批判を浴びた。
 東電の担当者は「当初は急いでタンクを用意する必要があり、ボルトで組み上げるタンクを選んだ」と説明。最近になって東電は溶接したタンクを導入し始めたが、増える処理水に対応するので手いっぱいの状況だ。

収束阻む、危機そこに

 東京電力福島第一原発は表面的には落ち着いてみえる。格納容器の破裂を心配するような状況でこそなくなったが、最大の難問である溶融した核燃料取り出しの前に、汚染水という大問題が立ちふさがる。危機はまだそこにある。
 確かに、溶融した核燃料はかなり冷え、建屋地下にたまる約十万トンの高濃度汚染水は徐々に薄くなってきた。原子炉の中が安定してきた証拠と言える。
 ただ、それで「事故が収束した」というのは誤りだ。今回の問題にしても、汚染水処理は一年ほどで終わるはずだったのに、地下水による汚染水増加で計画が狂って起きた。「収束した」と甘く考えず、早く問題に気付き、対応を始めていれば、ここまで追い込まれなかったかもしれない。
 そもそも福島第一の現状は、安定的に注水することで、状況が悪化するのを食い止めているにすぎない。東電は、放射性物質の放出量が「事故当初に比べ約八千万分の一に減った」と強調するが、環境を汚し続けていることに変わりはない。
 損傷した原子炉の詳しい状況はまだ分からず、溶けた核燃料を取り出し終わるまで危険は残る。原発前に石を詰めた金網かごを積み上げ、津波に備えているというが、3・11のような津波が来ればひとたまりもない。
 廃炉まで三十~四十年という道のりを考えれば、常に危険の芽を探し、巨大な危機につながる前に摘み取る対応が求められる。(原発取材班デスク・山川剛史)

(メモ)トリチウム

 原子炉内で発生する放射性物質の一つで、三重水素とも呼ばれる。水と非常に似た性質のため、現在、大量に処理する技術はない。福島第一にたまる処理水には、排出が認められる法定限度(1立方センチ当たり60ベクレル)の約38倍の約2300ベクレルのトリチウムが含まれている。新しい除染装置で処理してもトリチウムはそのまま残る。

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