「東電に資格なし」 意見と向き合わず柏崎刈羽「適合」を正式決定 規制委

 原子力規制委員会は二十七日の定例会合で、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が、原発の新規制基準に「適合」するとした審査書を正式決定した。意見募集(パブリックコメント)では八百七十件が集まり、福島事故を起こした東電に「原発の運転資格はない」とする意見が多かった。だが、規制委は字句を修正しただけで、審査を通した。

東電は責任を果たし終えていない

 原発再稼働には、新規制基準への適合と地元同意という二枚の切符が必要だ。原子力規制委員会が、うち一枚を東京電力に与えた。
 電力業界に言いなりの「とりこ」と指摘されたかつての審査に比べれば、規制委の審査は確かに厳しくなった。ただし、規制委自らが認める通り、新基準は必要最低限の対策を求めたにすぎない。審査は「新基準を守れば、事故は一定程度以上には拡大しない」ことを前提にしているが、その通りになる保証はない。
 柏崎刈羽原発が他の原発と根本的に異なるのは、運営するのが、重大事故を抱える東電という点だ。
 福島第一の事故収束は途中で、周辺地域の汚染は広域に残り、住民の苦悩が続いている。いまだ責任を果たし終わっていない事業者に、原発を動かす資格があるのか。
 いくら日本最大の電力会社とはいえ、二つの事故に同時対応できる要員はおらず、損害賠償への備えもほとんどない。規制委は東電の資金力も審査したが、新基準をクリアするための工事費を用意できるかチェックしたにすぎない。
 柏崎刈羽が立地する新潟県は、福島事故の検証が終わらない限り再稼働の議論をしないと明言している。あと数年は、もう一枚の切符はそろいそうもない。そんな中で、なぜ規制委が柏崎刈羽の審査を優先して進めたのか理解に苦しむ。(山川剛史)

パブコメに「資格なし」意見多数/「厳しい批判あるのは当然」と規制委委員長

 東電の原発としても、福島第一と同じ仕組みの沸騰水型としても、初の新基準適合。東電は賠償費用を工面するため再稼働を目指すが、立地する新潟県などが同意する見通しはない。
 寄せられた意見には、福島第一原発の事故収束作業や巨額の損害賠償を抱えている東電に、再び原発を動かす権利を与えることへの否定的な意見が目立った。だが、規制委が示した「考え方」は、いずれの意見に対しても正面から向き合わない内容だった。
 審査全般について、「通常より丁寧に調査した」と強調。規制委は「福島事故の収束をやり遂げ、柏崎刈羽を安全第一で運営する」との内容を、柏崎刈羽の保安規定に盛り込ませることで、東電に運転資格ありと判断した。これに対し、新たな重大事故が起きれば東電の存続が危うく、東電の社内文書である保安規定は意味がなくなるとの意見が寄せられたが、規制委は取り合わなかった。
 柏崎刈羽で新たな事故が起きても、東電には賠償能力がない点を問題視する意見もあったが、規制委は直接的には答えなかった。新基準向けの工事費を工面できることや、「原子力損害賠償制度がある」と一般論を書いただけで、東電全体の経営状況やほとんど備えがない賠償制度の現状には触れなかった。
 この日記者会見した規制委の更田(ふけた)豊志委員長は「事故当事者の東電に、厳しい批判があるのは当然。規制委としてもそういう思いは持っている。できるだけのことはやった」と述べた。(小川慎一)

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