柏崎刈羽の新基準「適合」に3つの疑問 ①東電の管理能力 ②福島の事故収束 ③新たな賠償リスク 

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が原子力規制委員会によって新規制基準に適合と判断されました。ただし、福島第一の事故収束と柏崎刈羽の安全という「二兎」を追う東電。「一兎も得ず」という結末にならないのでしょうか? 5日付「核心」をベースに、3つの疑問点についてお伝えします。

①東電の管理能力

 9月の規制委の議論は、早く柏崎刈羽の新基準「適合」を決着させようとの姿勢がありあり。
 「東電だから福島第一の事故が起きたとは言えない。むしろ、審査を通じて東電の技術力の高さを感じた」
 冷徹な科学的分析が持ち味の現委員長の更田豊志(ふけたとよし)氏ですが、同6日の会合では、感情たっぷりに熱弁をふるいました。YouTubeなどでご覧になった方は、奇異に感じられた方もいらっしゃると思います。
 ところが、「適合」と記した審査書案が事務方から示された翌28日、東電の技術力、管理能力を疑わせる案件が発覚しました。福島第一の建屋周りにある井戸(サブドレン)6本の水位計が誤って設定されていたのです。
 東京湾の平均海面水位(TP)を基準に、建物や地盤の高さ、水位も管理しようと決めてあったのに、誤って福島・小名浜港の海面水位(OP)で設定し、最大5カ月も気づかなかったのです。
 TPとOPでは1メートル以上も異なるため、その分、水位計の値がズレてしまいます。建屋にたまる高濃度汚染水の方が漏れないよう、必ず地下水位の方が高くなるよう厳重管理するのが鉄則です。規制委もこの点は、東電に厳命しています。
 結果的には、大きな水位逆転がなかったため、建屋からの汚染水漏れはなかったとされます。ただし、長期管理が必要な福島第一では、先行きが案じられる重大な案件です。単純な初歩的ミスだからこそ、頭の痛い問題です。
 10月4日の規制委会合では、柏崎刈羽の審査書案とともにこの問題が議題に上がりました。
 当然、東電の技術力について議論があってしかるべきですが、ほぼ素通り。東電の管理能力もさることながら、規制委の厳格さにも「?」がつきました。

②福島の事故収束

 東電が果たすべき社会的責任は、福島第一の事故収束と被害者への適切な償いです。
 頑張っている現場の作業員たちには感謝します。それでも、収束に向けた工程は、状況が分かってくるにつれ、容易には進まないと痛感させられます。
 政府は先月末に中長期ロードマップ(工程表)を改定。1、2号機のプールから使用済み核燃料の取り出し開始を3年遅らせて2023年度に変更しました。取り出し開始時期の延期はこれで3度目になります。
 前代未聞の事故現場。工程表の通りに進むはずもありません。遅れたことを責める報道も散見されますが、むしろ現実に即して工程表を見直すのは、現場の安全を保つ意味でも重要です。
 本サイトでは、各号機の核燃料を取り巻く状況、排気筒のリスクなどを大きなグラフィックとともに詳細に紹介しています(トップページから「福島の事故」→「福島第一原発」と入っていただき、ご覧いただければ幸いです)。
 東電経営陣は福島第一と柏崎刈羽を両立させると言明しましたが、口で言うほど福島第一の現実は生やさしくありません。もっと注力しても、現在の技術ではどうにもならない部分が多々あります。

③新たな賠償リスク 

 もしも柏崎刈羽で事故が起きれば、東電は資金面でどうなのでしょうか?
 ただでさえ福島事故で巨額の損害賠償に伴う負債を抱えており、さらなる資金面の負担がのしかかってきます。
 福島への対応、新たな事故が起きた場合のお金はどうなるのか。これらも本サイトに詳しく収録してあります(http://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/608)。
 現行法では電力会社は「無限責任」を負うのが原則とされています。福島事故の被害があまりの巨額だったため、電力業界は一定額以上は国も負担する「有限責任」へと、法改正してほしいと求め、諮問された原子力委員会(規制委とは別。従来からある組織です)の専門部会も業界の意向に沿った議論を始めましたが、「国民の理解が得られない」と見送る方向です。
 その代わり、各原発にかけることが義務づけられている1200億円の保険(※人為ミスなどによる事故は損害保険各社、巨大な震災などによる事故は国が保険金を支払います)を拡充しようと検討しています。
 ただし、政府推計では福島第一事故の処理費用は21.5兆円。それに比べると現行の保険はたった0.6%をカバーしているにすぎません。倍や3倍にしたところで、焼石に水なのは明らかです。
 結局、新たな原発事故が起きれば、電気代や税金でカバーする(要するに国民が負担する)ことになるのは必至です。

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