ふくしま作業員日誌 59歳男性 お盆は妻の墓に

 お盆には妻の墓参りをする。海沿いにあった家は、原発から六、七キロ。東日本大震災の津波に跡形も無くさらわれ、土台だけしか残らなかった。十年以上前に逝った妻の眠る墓も津波に流され、昨年高台の墓地に移した。
 墓をどこに移すか。さんざん迷った。震災翌年に、悩んだ末に建てた家は福島県いわき市内。津波の被害だから賠償はない。墓もいわきにと思ったが、妻の母親が「故郷の墓に入りたい」と望んだ。なんぼ空間線量が低くても、子や孫は墓参りに行かせられない。俺しか行かないよと話したが、それでも故郷がいいという。それで町が移した高台の墓地に移すことにした。
 古い墓地から死者の魂を抜く儀式は、町で合同でやってくれた。だが、遺骨はどうすればいいのか。役場に聞いたが「うちの仕事じゃない」と言われた。困り果てて、息子と二人で遺骨拾いに行った。
 墓は津波で、台座もふたもずれ、中に海の砂が四、五十センチ積もっていた。泥水混じりの砂をすくい上げ、ふるいにかけて骨を拾う。この辺は納骨する時、土に返すといって骨つぼを割って、骨を納める。だから妻と妻の姉の骨は混ざって区別がつかなかったが、遺骨は流されてなかった。新しい墓に納骨し、僧侶に魂を入れてもらった。 
 近ければ月命日に行けるけど、お盆とお彼岸しか行けない。いずれ故郷に戻りたい。でもどれだけ人が戻るのだろう。もうすぐ定年になる。息子も地元の会社に就職したし、福島第一原発のことは後進に任せよう。次は故郷の復興に携わりたい。(聞き手・片山夏子)

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