東京電力福島第一原発3号機の格納容器内の水中ロボット調査で、東電は二十一日、圧力容器下部で溶けて固まった核燃料(デブリ)とみられる黒い物質が複数確認されたと発表した。高熱を発したデブリの痕跡は2号機で確認されているが、デブリとみられる物質が撮影により確認されたのは初めて。
この日は早朝から、カメラ付きの水中ロボットを、圧力容器を支えるコンクリート製の土台の開口部から挿入し、圧力容器の直下まで移動させた。見上げる形で圧力容器下部を撮影したところ、制御棒や駆動装置がある辺りで岩石のように固まった黒い塊があった。
東電担当者は同日夜の記者会見で「溶融して固化したもので、デブリである可能性が高い」と話した。
事故発生当初、冷却が止まった核燃料は二五〇〇度前後まで過熱。溶けて圧力容器の底を貫通して流れだし、大半が格納容器の底にたまったとみられている。撮影された黒い物質は、冷却水で固まったデブリの一部の可能性がある。
圧力容器や制御棒の下方には、作業用の鉄製の足場があるはずだが、十九日の前回調査に続き、この日も確認できなかった。水素爆発の衝撃で崩落したり、デブリの高熱で溶けたりしたとみられる。
(解説)
原子炉の底に溶け落ちたデブリとみられる物質の姿を初めて撮影できたことは、福島第一原発の事故収束に向けた重要な一歩であることは間違いない。ただし、内部の放射線量は半導体も短時間で破壊されるほど強烈で、人間は到底近寄れない。依然として、デブリを取り出す道筋は見えない。
今回デブリの状況が垣間見えたのは、メルトダウンが起きた1~3号機の三基のうちの一基にすぎない。デブリは格納容器の底、上方の圧力容器や中間の構造物にもあるとみられる。状況が詳しく分かって初めて取り出しの具体策を練ることができる。
難問はまだまだある。デブリを水漬けにして放射線を緩和した中で作業することが望ましいが、現状では冷却水は格納容器のどこかから流れ出て建屋地下に漏れている。水の遮へいなしに実施する工法も検討されているが、技術は確立されていない。作業員が被ばくしたり放射性物質が拡散したりするリスクもあり、線量が十分低下するのを待つべきだとの意見もある。
いずれにしても、壊れた原子炉からデブリを取り出した前例はない。米スリーマイル島原発事故の場合は圧力容器はほぼ損傷しておらず、福島第一の収束作業は未知の作業ばかりだ。(山川剛史)
東京電力は二十二日、福島第一原発3号機の水中ロボットによる格納容器内の調査を続け、底近くの中央部付近で、溶けて固まったような岩状の物質が多く撮影されたと発表した。溶け落ちた核燃料(デブリ)の可能性が高いという。圧力容器下には作業用の足場があったが、落下していることも確認された。
この日、早朝からカメラ付きロボットを圧力容器を支えるコンクリート製の土台の開口部から、格納容器の底に向けて進ませた。昼までの約六時間、ロボットで各所を調べた。
前日より深い位置に進ませると、破損したパイプ状のものや、がれきが多くあった。圧力容器の下方にあるはずの格子状の足場が確認できていなかったが、二十二日の調査で脱落して沈んでいるのが確認された。底近くには白っぽい砂状のものが積もっていた。底近くの中央部付近では、黒い岩石状の物質がいくつも確認された。
ロボットは回収し、今回の調査は終了。東電は撮影した映像の分析を進める。
デブリとみられる物質が確認されたことは事故収束に向けて前進したといえるが、取り出しの障害物が多く炉内に存在していることも判明した。