山の恵みは今 帰還2割の楢葉町で山菜セシウム調査

山菜と生育していた周辺土壌の測定結果

最高値のコシアブラは2410ベクレル/kg、すべての山菜で検出

 春の大型連休のころ、福島県では山菜シーズンを迎える。東京電力福島第一原発事故による避難指示の解除から一年半が過ぎ、二割強の住民が戻った楢葉町の山菜はどんな状況なのか。住民の協力で山菜の放射性セシウム濃度を調べた。
 解除当初に帰還した元畜産業根本信夫さん(79)夫妻は、山と深い関わりをもって生き、山菜は食卓に欠かせない。連休の谷間の五月二日、水源地の木戸ダムのさらに奥にある乙次郎(おっとじろう)地区を中心に、山菜採りに連れていってもらった。
 「ここだ。探してみ」。日当たりのいい原っぱを見ると、あちこちワラビが出ている。砂利道を挟んだ沢には、自生のクレソンやワサビ、その脇にはタラの芽もあった。さらに山奥に行くと、根本さんがかつて牛を飼っていた小屋があり、その周辺にはコゴミが数多く出ていた。山の奥にはコシアブラもあった。フキとウドは自宅の庭にあった。
 採れた山菜は九種類。生育していた周辺の表土も持ち帰った。所定の手順に従い、4~14時間かけてセシウム濃度を調べた。
 浅く根を張り、重金属類を吸収しやすいコシアブラは、やはり群を抜いて濃度が高い。2カ所で採ったワラビの一つは食品基準(1kg当たり100ベクレル)の約2倍、ゼンマイは約3倍だった。ほかの6種は基準の半分未満の値だった一方、全ての山菜でセシウムが検出された。
 「結構(濃度が)あんだな」。結果を知った根本さんはこう語った。ワラビをあく抜きをして干し、一年を通じて煮物やわん物にして食べている。あく抜きでセシウム濃度は4分の1程度に減った。ウドやフキもゆでれば半分程度になることが本紙のこれまでの調査で分かっている。
 だがセシウムは残る。町役場には10分ほどで簡易検査ができる測定器が配備された。根本さんには、ぜひ測ってから食用の是非を判断してほしい、と伝えた。 (山川剛史、片山夏子)

測定手順と楢葉町役場が公表している山菜の測定結果

後記:原発事故で失われた「富」

 晴れ渡った空、山々にこだまするウグイスなどの声、吹き渡る風…。山菜を求めて歩いた楢葉山中での経験は、心が洗われるようでした。連れて行っていただいた根本さん、ありがとうございました。
 本来なら山との暮らし、山の恵みを心から楽しめるはずなのに、今では原発事故の影響を気にせざるを得ません。事故で失われた大切な「富」の一つだと感じました。
 万ベクレル単位に汚染された飯舘村のコシアブラやキノコに比べると、楢葉町のレベルは格段に低いのは確かです。ただし、あくまで相対的なものにすぎません。別の場所で採取すれば、値は全く違うでしょう。内心、フキやウドくらいは不検出(測定器で検出できないレベル)だろうと思っていましたが、食品基準の3分の1~5分の1とはいえ検出されました。
 あらためて原発事故の悪影響は、広く長く続くことを実感しました。(山川剛史)

楢葉町での山菜採取や測定の様子

関連記事