東電場当たり対応 回避できた汚染水漏れ

 東京電力福島第一原発で汚染水が漏れた地下貯水池は一月、東電の甘い対応の末、安易に使われ始めていた。その経過を追うと、東電が汚染水を貯蔵するタンク増設を渋り、規制機関も池に汚染水を入れる危険性をきちんと認識していなかった状況が浮かんだ。裏返せば、今回の汚染水処理の危機は十分回避できる可能性があったことも示している。(清水祐樹、小野沢健太)

 ■楽 観

 毎日約四百トンずつ増える汚染水は、福島第一原発が現在直面している最大の課題だ。対策の手を抜けば、それだけ事態が悪化することは確実になる問題だが、東電の意識は甘かった。
 「東電はタンクが必要になってから、その分だけ造るという姿勢だった」
 甘い規制しかしなかったと批判され、廃止された旧経済産業省原子力安全・保安院の担当者(当時)ですら、東電の姿勢は業を煮やすほどだった。
 その背景には、九月(昨年)になれば、従来の除染装置では除去できなかったストロンチウムなど約六十種類の放射性物質を除去できる新しい除染装置が稼働する、との思い込みがあった。
 保安院からは、稼働できなかった場合でもタンクが不足しないよう、今後三年間の計画を立てることを求められ、計画はつくったものの、その後の増設は必要最小限のペースでしか進めなかった。
 新装置さえ稼働すれば、わざわざタンクを造らなくても、計五万八千トンの容量がある地下貯水池に入れれば済む-との楽観ムードもあった。

 ■混 乱

 だが、そんな期待は昨年九月、見事に打ち砕かれた。新装置は安全対策が不十分と判断され、保安院から運転開始に待ったがかかったからだ。
 東電の混乱ぶりは今後の汚染水処理の予測資料を見ても歴然としている。工事が予定通り進んでいないのか、タンク容量予測が突然何千トンも減ったり、何とか目標量に届かそうとして、タンクが一基できるたびに容量予測を増やしたり…。
 九月までのゆったりした予測グラフが姿を潜め、毎週毎週、予測がめまぐるしく変わるようになった。
 年内は何とかしのいだものの、年末に最後の一基が完成した後、次にタンクが完成するのは翌年三月。
 従来の鋼板をボルト締めでつなぎ合わせて造るなら一週間ほどで完成するが、この後、主役にしようとしていたのは、耐久性はあるが完成まで二カ月ほどかかる溶接型タンクだったからだ。
 年明け、空きタンクがなくなり、汚染水の行き場がなくなることが確実となった。

地下貯水池(丸数字は池の番号)

 ■泥 縄

 一月八日、東電本店の担当者が、東京・六本木の原子力規制委員会事務局を訪れた。ほぼ毎日の福島第一原発の作業報告のためだが、地下貯水池に汚染水を入れ始めたことを報告した。
 本来、池に入れる予定だった新装置で浄化した水に比べて、約六百万倍も放射性物質に汚染された水だ。
 だが、規制委事務局は報告をそのまま受け入れ、面談は十五分間で終わった。事務局担当者は「貯水池の健全性(漏れる可能性)はあまり心配していなかった。それより、タンクが足りなくなったことが深刻だった」と振り返った。
 汚染水漏れが発覚して五日後の四月十日、東電は池の継続使用をやめ、新たに地上タンク約二万トン分を六月までに造り、池の水を全てタンクに移送する決断をした。
 やる気になればできるのに、やろうとせず泥縄式の対応をした東電。先回りして危険を防ぐはずの規制委も、期待される役割を十分に果たせなかった。

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