森林除染「竹林」に偽装 単価10倍 1200万円不正か

 福島の原発事故に伴う福島市の除染事業で、下請け企業の一部が、通常の森林除染を工事単価が十倍となる竹林で作業したように装っていたことが、市や元請けの共同企業体(JV)への取材で分かった。市は偽装に気づかず竹林の工事単価で除染費用を支払った。業者側は約千二百万円を不正に受け取った可能性がある。下請け作業員からの内部告発を受け、市とJVは調査している。 (片山夏子)

地面に短く切った竹を置いて「竹林」と報告

 JVなどによると、現場は同市松川町にあり、晃(ひかり)建設、古俣工務店、ノオコー建設(いずれも福島市)の三社JVが受注した。JVは二〇一四年九月~昨年三月、住宅から約二十㍍以内にある森林計約十八万五千平方㍍を除染し、計約六億二千万円の支払いを受けた。問題の現場はそのうちの約二千六百平方㍍。
 市の森林除染に対する発注単価は一平方㍍当たり五百円強。竹林は密生していて立ち入りが難しかったり、そのままでは落ち葉が除去できなかったりするため、間伐や切った竹の処分など手間がかかり約四千六百円が上乗せされ、約十倍の単価が設定されている。
 三次下請けだったゼルテック東北(福島市、三月に閉鎖)の作業員は、落ち葉などを除去した森林の地面に短く切った竹を並べ、竹林だったように装う写真を撮影。JVはこの写真を使った工事完了報告書を市に提出していた。本紙は写真の現場を確認したが、竹の切り株はなかった。
 市への内部告発は昨年十一月。JVの工事責任者によると、JVは告発後に写真偽装に気づいた。責任者は取材に、下請けの写真偽装を認め、「市から約二千六百平方㍍は竹林ではなかったのではないかと指摘されている」と話す。
 市の除染企画課の担当者は「全ての現場を確認するのは困難で、業者からの報告を信頼し、書面で確認した。対応を協議している」とした。
 JVの工事責任者の話 管理が不適切で、偽装写真を提出してしまった。それを基に市が竹林と判断したのなら、過剰請求であることを認めざるを得ない。
 ゼルテック東北元社長の話 竹が全くなかったのではなく写真の担当者が誇張した。JVに報告する際、偽装写真を削除するよう社内で指示したが、一部の写真が上がってしまった。
 森林除染 福島市は2011年秋から、住宅地などの除染を実施。住宅から約?㍍以内の森林も生活圏森林として除染している。市は1平方㍍の中にチェーンソーを使わないと切れない太さの竹が4本以上あると、竹林に認定している。

チェック態勢強化急務 「実質業者に丸投げ」 同じ写真使い回し

 福島市松川町の除染作業の不正は、下請け作業員の内部告発がなければ発覚しなかった可能性が大きい。除染作業には巨額な公費が投じられている。これを目当てに不正も相次いでおり、発注者側のチェック態勢の充実も求められている。 (片山夏子)
 JVが市に提出した工事完了報告書の写真には、竹を伐採した切り株らしきものが写されていたが、実際は短く切った竹を地面に置いただけだった。
 内部告発した作業員は取材に偽装写真の撮影現場を目撃したと証言。「(写真を撮った担当者が)直径十㌢ぐらいの切った竹をビニールに入れ、作業車の後ろに積んでいた」と明かす。
 報告書には、伐採した竹を束ねたり、運んだりする様子の写真も添付されているが、同じカットの写真が複数の現場の作業風景として使われていた。
 市はJVの報告書や添付された写真を基に完了検査したとするが、こうした不自然さを見落とし、除染費用を支払っていた。
 市が現場調査し、偽装に気付いたのは昨年十一月の内部告発後。記者が先月、現場を訪れたところ、切り株はなく、竹林ではないと一目で分かるような場所だった。
 除染作業を巡っては、ほかにも問題が続発。刑事事件になったケースもある。
 今年三月、富山県の業者が下請けに入れるよう便宜を図った見返りに接待を受けたとして、環境省福島環境再生事務所の専門官が収賄罪で起訴された。除染で出た廃棄物の不法投棄、労働者派遣法に違反した除染作業への人材派遣などの摘発も相次いでいる。
 内部告発した作業員は「現場のチェックは実質、業者に丸投げになっている。他にも偽装を見抜けないままになっている現場があるのではないか」と話した。

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