川内避難計画 形だけ 自治体の大半 施設側に知らせず 学校困惑「受け入れ無理」

受け入れる自治体のほとんどで、受け入れ先に指定した施設に避難所となることを知らせておらず、施設側も把握していないことが本紙の調査で分かった。国や県は「避難計画は整備済み」としているが、受け入れ準備もないままでは、いざという時に混乱を招くのは必至。計画の実効性が問われそうだ。(小倉貞俊)

避難所の指定先に尋ねると、当事者意識は薄かった

 本紙は、川内原発の事故時に、五~三十キロ圏内からの避難者を受け入れることになっている十五自治体(熊本県含む)に、対象施設との話し合いや物資の備蓄などの状況をヒアリング。さらに学校や公民館などいくつかの避難所を訪ねるなどして、当事者意識などについて取材した。
 その結果、十二の自治体では、避難先に指定されていることを施設に知らせていなかった。知らせた三自治体も、伝えた内容は避難者の予定数程度だった。避難所の立ち上げや食料など物資の調達・負担について、避難元と避難先の自治体のどちらが行うのか、具体的に決めた事例もなかった。
 知らせていない理由を尋ねると「各施設は地元の災害時の避難所に指定されており、あらためての通知は不要と考えている」(南九州市など)、「場所を提供するだけ。食料などは避難元が準備すると認識」(熊本県津奈木(つなぎ)町など)との回答だった。当事者意識は薄く、いざという時、素早い対応ができるかは疑わしい。
 避難所の指定施設を回ると、どこの職員も原発事故の避難所になっていることを聞かされ、驚きの表情を浮かべた。
 約二百人が避難することになっている霧島市の中学校では、校長が「いま避難してこられても、マニュアルもなく対応できない。教職員も心の準備ができない」と困惑。姶良(あいら)市の公民館の職員は「台風などの自然災害時に地元の人が避難に来ることも多く、原発事故と同時に起きたら手に負えない」と話した。
 鹿児島県の避難計画では、避難所の開設などの初期対応はできるだけ受け入れ自治体が行うべきだとしているが、理想にはほど遠い現状だ。
 県の担当者は取材に「現場となる施設に対しても、事前に周知するのが望ましい」と認めつつも、指導するかどうかは決まっていないという。

川内原発

(メモ)川内原発の避難計画
 原発30キロ圏にある9市町が策定した。計画の中で指定した避難所は約700カ所あり、場所は事前に県が調整した。圏内人口は21万人で、自治会ごとに1カ所ずつ小学校や公民館などが割り当てられている。政府は避難計画を9月の原子力防災会議で了承し、安倍晋三首相は「具体的かつ合理的」と強調。ただし、国も積極的に計画づくりに関与したのは、事故時に即時避難を求められる5キロ圏にすぎない。

川内避難計画 福島隣県の教訓どこに 情報不足 受け入れ難航

 九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)の重大事故時の避難計画のずさんさが、本紙の調査で明らかになった。事前の心積もりもなく、突然、多数の避難者を受け入れることがいかに大変かは、東京電力福島第一原発事故で証明済みだ。当時、福島県各地から避難者が集まった隣県、栃木の事例を振り返る。(小倉貞俊、清水祐樹)
 東日本大震災から四日後の二〇一一年三月十五日。那須町周辺の国道4号では、ガソリンを使い果たした無数の車が乗り捨てられた。別の車に乗せてもらって、たどり着いた人もいた。
 コンビニではあっという間に品物がなくなり、道の駅で放射能汚染のチェックが始まると、心配そうな人が列をつくった。
 十八日には、翌日から県内各地で福島からの避難者を受け入れることが急きょ決定。鹿沼市の体育館では飯舘村の村民約五百人を受け入れることになり、同市職員は防寒用のマットを敷いたり、仮設トイレを追加で設置したりと、対応に追われた。
 避難者は逃げるのにやっとだったため、着の身着のまま。行政だけでは食料や物資の調達は足りず、多くを寄付で賄った。避難者を支援する人員も同様で、ボランティア数十人が毎日避難所に駆けつけていた。避難所運営は試行錯誤の連続。当時の担当職員は「早い段階で受け入れ人数など避難者の情報を知らされていれば、より落ち着いた対応ができた」と振り返った。
 今回の本紙の調査で、川内原発で重大事故が起きても、避難者受け入れが円滑には進まない可能性が高いと判明した。薩摩川内市の山之口自治会長、川畑清明さん(58)は「避難してからが大変なのに、行き先を決めただけというのでは論外。県はきちんとした計画ができるよう支援してほしい」と、行政の対応の遅れを危ぶんだ。

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